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Arcadia Online  作者: lime
序章、とっても、とっても、チュートリアル。
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7.冒険者ギルドとか言う組合

 明日、遂に成績が帰って来るのです。

 ……時間割にふざけて、『六時限目:地獄』などと言う物を創り上げている奴らがいましたが、こう言うのはアウシュビッツ並みの精神ダメージが有ると思うのです。

「よし! じゃあ次はギルドだね!」


 あれから数十分ほど、エミィはカエルがつぶれたかのような声を出して、綿飴に押し潰されていたが、それでも尚エミィには食欲が有ったらしく、地に這い蹲っても食べる事をやめなかった。その所為で、数十分と言う時間が掛かってしまったが、ようやく次の段階へと進める。

 ……まあ、進む前に人に踏みつぶされて圧死してくれれば良かった。綿飴をのどに詰まらせて窒息死すれば良かった。綿飴に毒でも混ざっていたらよかった。若しくは誰かしらにハイエースされればよかった。若しくは、何でも良いからボクの視界から失せてくれればよかった。等と言う事を妄想したが、結局のところそんな事にはならなかった。本当に恨めしい事だ。


「ギルド?」


 ただ、エミィはエミィであり、エミィで有るからしてエミィなのだ。つまり、チュートリアル要員を兼ねているのだ。なのでこいつの指示を聞かなければ、あの厄介なQ&Aを眺めなければいけない事になる。

 Q&Aなんて、古事記伝を一度読んだだけで全てを理解するような読解力が無ければ分からない位だ。ライトノベルですら、読解する事が難しいボクにとっては不可能と言う事を指す。なんて糞ったれた妖精なのだろうか。人の弱みを握るなど、日本人か日本人がやる事だろうに。なんて陰険な奴だ。

 あんなQ&Aをまともに読解する連中なんて、いないでしょ。


「そう! ギルド! 君らプレイヤーが所属する……一種の組合だね!」


 組合、と言う言葉を聞いて、ボクはとっさに額に手を当てる。……この妖精が現実主義者的な側面がある。その事を理解していても、耐え難いことは事実だ。だって目の前でくるくると回転しながら浮遊し、ボクとすれ違う人達は剣などで武装しているのだ。その中で「組合」。

 本来組合と言う言葉は全く持って普通であり、パワーワードではないだろう。しかしながら今の状況で其れを使えば凄くパワーワードになる。と言う事を理解して頂きたい。

 それになんだ、冒険者は組合を作る程立場が弱いのか。と言うか組合と言う物が存在する程、この世界は人権を尊重しているのか。

 ……正直に言って良い?

 わけわかんないよ?


「組合って……まあいいや、でも冒険者って何やってんのさ?」


 まあ、どうせこいつに常識など、配慮など、遠慮など、思慮など、慮る行為など、知らないのだろう。そもそも、きっとこいつは、慮、と付く言葉知り得ないのだろう。それどころか、それ等の概念すら破壊してもおかしくない程の人材だ。

 きっとこれほど無意識に文化的ジェノサイドを起こし掛けない存在は他にはいないだろう。現に文化的ジェノサイドと言う訳ではないが、雰囲気はぶち壊している。

 これほど雰囲気をぶち壊すのは逆に難しい程に、世界観を崩壊させている。


「……き、君らの世界で言う慈善活動を、お金で依頼されてやってるよ。ぷふっ」


 そんなエミィの事をひそかに誹謗中傷していると、唐突にエミィが不安な事を宣いだす。

 ……待ってくれ。エミィの言う発言が真実だとすれば、冒険者とは倫理的クズの総称のように思えてしまうのだけど。流石に、間違いだよね? 笑っているのだから冗談なのかもしれないけどさ。

 ボクらプレイヤーが慈善活動にすら金をせがむゴミと言う評価を食らっている様にしか思えないけど。


「……ごめん、ギルドって加盟しないといけないの?」


 エミィの言葉は信用できない。しかしながらもしそれが本当だった場合、見事ボクはクズの仲間入りをすると言う訳だ。……万が一、億が一、もしそれが本当だった場合には、本気でクズの仲間入りをしてしまうのだ。そんなのは当然嫌だ。

 勿論、慈善活動を自発的に行う様な奉仕精神は存在して居ないが、クズだと言われて悦ぶ性癖などボクは保持していない。……そんな暴言はそう言う奴らに言ってくれ。日本人だって全員が全員、変態って訳じゃないんだからな。


「加盟しないといけないね、でもさっき言ったのは一部の人間だけだし、それに加盟するだけすればOKなんだよ」


 だったら、聞こう、だったら叫ぼう。なんでキミは誤解を生む発言をした。キミはなんでは笑ったの。と。必要ならば拳さえ上げて叫ぼうではないか。

 この妖精と言う名の混沌を、正義でも悪でも何でも良いから、とりあえず殴らせろ、と。

 ……いや、本当に、冗談抜きにしても、そう言う事は止めてもらいたい。只でさえチュートリアルがエミィっていうだけで難易度ルナティックなのに、情報リテラシーをしなければいけないとか、面倒にも程がある。


「あと、一つ言って於くけど、魔物でも不用意に殺しちゃうと妖精が逃げてくからね、妖精使いの君は討伐系の依頼を受けられないよ? 別に受けても良いけど」


 うん、先にそれを言ってくれ。ボクはそんな事を考えながら、エミィに拳を振り上げない様に腕を抑え込んでいた。

 本当に……手元に銃が有れば即この場で乱射しているだろう。だから、黙って、無表情で、何も話さずに、最短距離でで、その組合とやらに連れて行ってくれ。

 頼むから、本当に、理性が崩壊する前に早く。


「へ、へぇ、そうなんだ」


 陰険で陰湿で陰気で、日本人な日本人だとしても、耐えられる事と耐えられない物が有るのだ。……そう言った理不尽に対する理性の冗長性は、きっと日本人が世界において最も秀でていると確信する。しかしながらそれだとしてもキレるにはキレるのだ。


 だって人間だもの。

 日本人は悪魔でも無いし、神でも無い。……新人類でも無く人間だ。……世界中で最も陰険なだけで、陰湿なだけで、同じ人類だ。欧米諸国からすりゃ別の生物に見えるかもしれないが。


「……あと、最後に言って於くんだけどさ、あそこはわたしでも怖いから、外で待機させてもらうね」


 何を冗談を言って、と思ったのだが、本気で嫌そうな顔で、ある一方を見つめている姿を見て、流石に連れて行く気はなくなった。……まあ、それで怒気が消える訳では無いし、ぐちゃぐちゃにひき肉にしてやりたいと言う本能的願望が消え去るわけは無いのだが。


「じゃあ、あそこが冒険者ギルドだからね! 時折やべえ奴が居るから、気を付けてね!」


 気を付けて?

 そんな、不安しか感じられない、そんな言葉だけを残しやがったエミィに対して、多大なる殺意と厄介さに、お前は敵なのかと叫びたくなったが、推定無罪とかは確りと考えなければいけないのだ。

 例えどれだけ悪質な輩だろうと。行う行動すべてが、比喩表現でも無く、すべてが、サボタージュがかっているエミィだとしても、推定無罪は確りとあてはまっ――るのかな? 人じゃないけど?


 しかしながら、エミィの話を聞いていると、結局何時しか入らなければいけない様なので、死を覚悟して、ボクは不安しかない冒険者ギルドの中へとはいっていった。


 因みにボクは百合らしい。……by女友達。

 どういうことだろうね。


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 一応、Twitterをやってました。  @Lime02_narou  です。……アカウント変更したので、今の所投稿は全くしてないですが。
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