22(1/2).仮題、扉から邂逅までの数分間。
風邪ひいたからごめんね。
「お、音は出ないのか」
そうして、多大なる決心をし扉を押してみると、意外なことにその扉は何ら音もたてず、蝶番がさび付いていて引っかかる、みたいなこともなく、なめらかに開いたのだ。
……ここだけ建て替えたのだろうか。
「……見えない」
そんな些細なことに対して、疑問に思いながらも、結局音が発せられなかった幸運を噛みしめながらも、恐る恐る、少しだけ開けた扉の隙間から部屋の中を覗き込んだ。
しかしながら、扉の目の前には、本やら、書類やらの束が縦に重なっているせいで、視界が封じられてしまい、一体中でナニが行われているのかは認識することはできなかった。
いや、まあ、本当にナニだった場合は覗けないほうがいいんだろうけどね。……変な性癖に目覚められても困るし。
「……どうしよう」
これ以上扉を開けてしまうと、もしかしたら扉の付近にある本や書類の集合体にぶつかってしまう可能性があるし、下手したらそれらが倒れてきてしまう可能性がある。……そうなってしまえば、殺されるか、それとも嫁にされるかのどちらかになるのは容易く想像できる。
……ボクからしたら前者のほうが後者よりも億倍ましなんだけどさ。
「……妖精さん、人間にだけ有効な毒ガスを散布したりできない?」
普通に考えれば、妖精が生物兵器じみた行動を起こせるとは思えないのだけれど、もしかして、このゲームならば、と一途の希望に掛けて声をかけたのだ。
しかし、やはりというべきか、妖精は首を横に振るい、何故かすまなそうな表情をしているのだ。
「そ、そんなに落ち込まないで」
どう考えたって、幾らこのゲームの製作者サイドだって、グレーでもなんでもなく、完全な漆黒、ベンタブラックよりも黒いといってもいい、生物兵器の類を妖精に保持させるなど、幾らなんでもいかれているとしか思えない。……このゲームを何らかのとして疑わざるを得なくなる。
そうなってしまえば、ボクはこのゲームの製作者サイドには夢野久作の生まれ変わりか何かがいると、断言する。
「大丈夫だからね」
さすがに、ボクだって生物兵器なんぞでここにいる人を殺したいわけではないし、まずそんな滅茶苦茶なことを言ったというのに、真に受けて、しょんぼりした表情を見せられると、どうしようもなくなってしまうのだ。
……だから、やめてほしい。幼女を泣かせているような気分になる。
「……でも、どうしようか」
最終手段として、あったら頼もしい、こちらが安全圏にいる状況下で対象者の殲滅、という行為がなくなってしまった。――まあ、ないほうが良いんだけど。
その為、ボクらに残された最終手段というものは、無謀な突撃しかないという最悪な状況。……つじーんドクトリンでも否応なしに採用しなければいけないということなのだ。
「……状況……いや、そもそもから変わってないか」
状況が一転した、とほんの一瞬だけ勘違いしそうになってしまったが、そういえば鼻からこんな状況であるし、何がどう転んでも、今や少し前以上に悪い方向へと進むわけがない。……それどころか、少し冷静になったから、よい方向に転んだといえるだろうし。
「……もうちょっと、開けるしかないのか」
しかしながら、このまま扉付近の紙束のみが見えるこの状況が膠着していても、一向に事が進むわけもなく、それどころか向こうはこちらが行動を停止している状況でも、行動は行えるわけであって、まったく意味がないことは明白だった。
「……良し、開けよう」
これ以上開けてしまうと、向こう側から一目見た瞬間にばれてしまう可能性が高くなってしまうのだが、やはりこれ以外、手がないのだ。
小さい妖精を偵察に使う、なんてもってのほかだ。
そもそも、妖精はほんのりと光っているせいで、たとえろうそくか何かで光がともっているとはいえ、いかにも炎ではない光が混じっていたら、すぐさまにばれるのだ。
……第二の犠牲者なんて望んでもいない。
「……でも、エミィを誘拐した犯人の可能性が高いから、うかつに接触するのは危険だよね」
けれど、やっぱりそいつが危険なことは変わりなく、注意しなければいけないことは変わりなかったのだった。
ドンっ。
しかし、そんな風に考えていても、事故というものは起こりうるものであって、ボクはその事故を引き起こしてしまったのである。
「ねぇ? だれか、いるの?」
その瞬間、背筋が凍るような、生気の籠っていない声で、きっとボクへ向かって言葉が発されたのだ。
そのことを認識した瞬間、ボクはすぐさまに、この古城へとはいってきた大門へと、今までにないほど全力で、つかまりたくない一心で、走ったのだ。
勉強しすぎた可能性が微レ存?




