18.敵対
平成最後のにっちようびぃ!!!!
ちなみにですが、ゴールデンウィーク中も、日曜日投稿にさせていただきます。
「はぁ、はぁ、わかりましたか? つまり言えば、あなたのような人間は、いや人間そのものが、この森には不要であり、害悪でしかない、という事なのです」
あれからという物、目の前の女性はすさまじい勢いで、ボクを反論させる隙も、ボクが何かをする隙も、傍観者となっている妖精が、ボクとその女性との会話を中断しようとする隙も、まったく存在せず、女性だけがしゃべり続けて三十分。
しかし三十分もたったおかげで、ようやくそのマシンガンのように高速で発され続けていた女性にも限界が訪れて、息を切らしながら説教の締めへと入っている。
「そもそも、人間は破壊すること以外においては誇ることがないのですから、森に入ってきたことは、森の破壊を意味するのです」
しかしながら、ボクが説教を素直に、まともに聞くような人格者でもないし、その説教の意味を理解するほど精魂が直線的な人間ではなく、捻くれたボクは茫然とその喋り続けていた女性の顔面を眺め続けていただけだった。
その為に、この三十分で、この女性が躍起になってボクに伝えようとしていることなど端から理解しておらず、それどころかなぜここまで暑くなって説教をしているのかさえ理解できていないし、そもそも何を話していたかも覚えていない。……というより、覚えているわけもなかった。
つまりは疑似的な睡眠状態になっていた、という事なのだ。
「だから今回は許容しますが、今後あなたがこの森に入ってきた場合には、それ相応の手段をとって、排除させていただきます」
さらに言えば、八割方確証は得られないものの、確かこの女性は『ボクがこの森へと入ってきた』から、ボクへと熱くなって説教をしている。のだと思うのだが、残念ながら、ボクは決して主体的にこの森へと侵入したわけではないのだ。
……いや、それではまるで、ボクがいやいやこの森に入ったという語弊が生まれてしまうかもしれないが、正確に事を話せば、妖精たちがエミィを救うために、という名目で疑心を心に浮かべながらもボクはこの森に入っただけなのだ。
つまりは「森だぁ!」なんて言葉を放って走って入ったわけではないのだ。
「では、もういいので帰ってください……道案内には妖精を一人使わせるので、それでどうぞ」
その為、これらはすべて、ボクの免罪でしかない。
こんな状況絵、ボクみたいな捻くれた奴が、裏で何かを画策していないわけがない。
そもそも免罪で説教を食らうようなことが、一番大っ嫌いなボクが、なぜ三十分間もこの女性をぶん殴っていないのかと言えば、社会人的な理性と倫理観が、ボクの本能的な行動をかろうじて制止していたわけであって、普通にキレているのだ。
……つまりは、ほんの少しだけ、ジェノサイドを行おうかと思っているわけだ。
「……そういえば、あんたは何なのさ?」
そうして、このいつの間にかいた部屋から立ち行こうとする女性に向かって一言。
今まで説教をされていた側が、絶対に言ってはいけないであろう台詞を、その女性に向かってぽつりとこぼすようにしゃべったのだ。
もちろん、この行為が火に油を注ぐどころか、ニトログリセリンに石をぶん投げるような行為だという事はわかっていたが、正直言ってボクの性格上、喧嘩を売られたのならば数十倍にして返却しなければ気が済まないのだ。
……たとえ、今まで困惑気味な表情をしていた傍観者の妖精が、引き攣ったような表情を見せていたとしても、そんなのはどうでもよかった。
「……私は妖精を支配する者。そう名乗らせていただきます。それと、その人を馬鹿にしたような下品な言葉遣いを私に向かって使わないでください。私が汚れます」
その途端、部屋から出ようとしていたその女性は、こちらを振り向きつつも、そんな言葉をボクがやったようにぽつりとつぶやくようにして言葉を発していた。
しかしながら、ボクとは違って、振り返ったときに見えたその女性の表情が、今までボクを説教していた時のそれとはまったく異なり、生物味のない、まるで恐怖だけを底に集約したような、異常なほどの恐怖感と威圧感をまといながら、体の芯までを凍てつかせるような目でこちらを見ているのだ。
「……なら、もっとそうじゃないか。なんでもボクに説教なんて垂れるのさ? 意味が分かんない」
とはいっても、ここで負けては単純に強い権力に負けるだけの歯医者じゃないか。確実に理性だとか知性だとか、そういった物が感じているものではなく、本能的になそれに、ボクは屈することはせずに、その女性へとかみつき続ける。
しかもだ「妖精を支配する者」と自らを名乗っているのにもかかわらず、なぜ妖精に連れられてきた側おボクが説教をされて、連れてきた側の妖精が説教をされないのだか。
……しかも、そんな仕様もないことに、エミィを助けなければいけないこの状況で、三十分も無駄になってしまったのだから、殺意を抱いても致し方ないだろう。
「……へぇ? 貴方の御託はどうでもいいのですが、その首を切り取られたくなければ黙ってもらえませんかね?」
しかしながら、その女性が孕んでいる、そのあまりにも危険すぎる土器に、本気でボクの首を切りかねない勢いなのだ。冷や汗をかかずに、今まで通りに平然にしているほうがおかしいとは思っても、こんな無駄な時間を通夜してまでエミィの救出を――。
……いや、ここで口論しているほうが、無駄な時間か。
「じゃあ、もういいです。妖精さん、ボクはボクなりにエミィを探すよ。別にキミたちがどう探そうとは勝手だけど、もうボクを邪魔しないでね」
もちろん、エミィがどこへ行ったのかはわからないし、この世界での知識も常識もわからないボクが、がむしゃらに歩いても、大した結果が出ないことは目に見えている。
それどころか悪い方向にさえ進んでしまう可能性がある、とわかっていても、こんなところで訳も分からない御託を聞いているよりかはましだ。
無謀という事もわかっている。けれど、ボクを助けるため意、自ら犠牲となったエミィを放って、こんな訳も分からないばかげた話を行っているよりは百倍ましだった。
……ボクだって、人間として、そこまで腐っているわけではないのだ。
というか、捻くれているだけで、腐っているわけではないんだ。
「では、帰って――――――いま、何とおっしゃいました?」
コツコツコツ。
ボクの憤怒の感情を表現するように、この部屋の中に低く、大きく、ボクの足音が部屋の中を響き渡りながら、その女性の真横を通り過ぎ、そして、扉にあるドアノブに手をかけた。
その時、突如として肩に手を置かれる感覚に襲われた。……妖精の支配者、とやらに肩に手を置かれたのだ。
「離してください。ボクは大事な友人を探しに行くんだ。貴様ごときに邪魔などさせない」
もうボクとしては時間など浪費させたくなかった。
今までボクが出したこともないほど、低音で、威圧的な口調で、威圧的な雰囲気を伴った言葉が発され、ボク自身もほんの少しだけ驚いてしまったが、そのままで妖精の支配者を睨んだ。
妖精の支配者のくせに、エミィを連れ去られているのに、お前は暢気なんだな。という軽蔑を込めて。
「待ちなさいっ! 貴様は妖精を視認できるのかっ!」
しかし、その威圧を上回る怒声をボクに投げつけて、その場の雰囲気は一転する。
ただ、支配者が放った怒声は、ただ単純に怒る、というものではなく困惑の満ちたような怒声だったように感じた。
「……妖精が見えないのに妖精と話す奴がいるとでも?」
ただ冷静に、ただ冷酷に。その言葉を放ってボクは扉を開けようとした。
しかしその時、ボクの肩に置いていた支配者の手に力が入り、ボクの動きが一部分、制限されてしまう。
が、ボクはそれを無理やりに払いのけて、そのまま扉を開けて飛び出してゆく。
「――!? ――!?」
その時に、一人の妖精がボクについてきて、戻るように精一杯伝えようとしていることはわかったが、あんな奴が首長の所にいて、一体何になるというんだ。と思いながらボクはその妖精へと「町はどっちにある?」と言葉を放つ。
その言葉を聞いた妖精は、ボクの説得は無理だとでも思ったのか、悲しそうな表情を見せて、そのままゆっくりと飛んで行く。
「ありがとう」
一言。怒気に冷静さを欠きながら、知性をほんの少し欠きながらボクはそう呟いて、そのままその妖精の後ろをついていったのだ。
理由としては宿題とか一杯出されたり、復習とか、一杯やんないといけないからです。
次回投稿は令和元年ですね。




