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夏の幻想に手を伸ばす

作者: 雪水湧多

またこの季節が巡ってきた。

暑苦しくて、服が汗で体にへばりつく。

冷房で服が冷たくなって、体が冷え過ぎてしまいやすい。

でも、やっぱりあの「青空」に「入道雲」、ギラギラと照りつける「太陽」の下、風になびく「白いワンピース」や「白いカーテン」が頭をよぎる。

イメージの中にいる「あの子」は誰だろう。

「華奢」で

「儚げ」で

どこか「芯の強さを感じる」

あの雰囲気。彼女が麦わら帽子を押さえるとき、つい視線を向けてしまう。そんな僕を彼女は笑うのだ。

「........」

無言で、包み込むように微笑んでいるように感じる。

ほんとは何か言っていたのかもしれない。

手で隠れて見えないけど。

ほんとは泣いていたのかもしれない。

麦わら帽子がその眼を隠しているけれど。

ほんとは苦しんでいるのかもしれない。

...

僕にはわからない。

僕のイメージなのに、わからない。

窓から見える海が鮮明にわかって心の底から綺麗だと言えるのに、わからない。

なぜわからない。

...

それすらわからない。

でも、わかっていることもある。

それは、

あのイメージは「此処」ではないどこか。

場所が特定できない。

ありきたりなのだから当たり前。

「病室」

「夏」

「女の子」

「白いワンピース」

そして、

「切なさ」

夏のテンプレートのイメージ。

こんなのは、誰にだってイメージできる。

でも、

「女の子」はみんな違う。

だから知りたい。

「誰」なのかを。

そもそも、根底として存在しているのか。

実は理想の女性像なのか。

夢のように揺らぐから、毎回違うのかもしれない。

正解なんてない。

けど、知りたい。

知りたいけど、知らない。

手を伸ばしても届かない。

イメージの中でも

現実でも

伸ばした手は

彼女に触れない。

声も出ない。

いや、出せない。

足も動かない。

動かせない。

手を伸ばすだけでも精一杯。

無理やり動かそうにも、現実に引き戻される。

ただ知りたいだけなのに。

僕の望みはそれだけなのに。

ああ、心が疼いて苦しい。悔しい。

ただ見ていることしかできない自分が情けなくて殺したくなる。

殺そうにも引き戻される。

去年もまたこのイメージをみて、苦虫を噛み潰したというのに。

今年こそは、知りたい。

あっ

引き戻される。

イメージの世界から、自分の世界から、悠久の時から。

現実に引きずりこまれてしまう。

嫌だと、振り払おうともさながら時間の流れのように一方的に流される。

目を覚ますと、見飽きた天井が迎えてくれる。

望んでない。

ああ、あれは夢なのだと理解する。

でも、どこか夢とは違う感覚を覚えている。

さて、次はいつみれるのだろうか。

今度こそ、今回こそ、知りたい。

もう、見ているだけは嫌だから。

彼女に触れて、話して、知りたいだけなんだ。

せめて、今年は話しかけてみたい。

何年かかってもいい。

何十年かかってもいい。

僕は彼女のとなりに立って、星空を眺めてみたい。

いつになるんだろう。

もし、無理ならそんな時が来なくてもいい。

ただ、追いかけた事実が欲しい。

違う。

僕はきっといつまでも追いかけていたいのだ。

この頭が動くまで...

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