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影濁す
「さっさと倒して……」
言って、朝さんは一瞬硬直した。
そしてすぐに、三日月刀で鬼の頭の上を一閃した。
プツリと、何かが切れるよう音がした。
間もなく、鬼は膝から崩れて地面に倒れた。
ズシンと、軽い地震が起きて足下がグラグラ揺れる。
「人……形?」
まるで操り人形の糸が切れたかのように、いや、本当に糸を切ったんだ。
鬼は初めから、蘇ったりしていない。
そういう風に見せていただけだったんだ。
「フフフ。 ではまた会おう、花びら達よ」
洞窟から不気味な気配が消えた。
まるで、煙が充満した部屋から出たみたいに、気分が清々しい。
結局、私は敵の顔を見ることも、朝さんの役に立つこともできなかった。
「………仕方ない、帰ろう。 仕事は終わりだ」
朝さんは傍で歯噛みしていたが、小さなため息を吐くと、すぐにいつもの爽やか雰囲気を取り戻し、何事もなかったかのように話しかけてきた。
「……はい」
私はやるせない気持ちで頷いた。




