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闇津風
「鬼! よりにもよって鬼とは! この私が! これは久々の傑作だ、ハハハ!」
何が面白いのかは、全く分からない。
けれど、依然として油断できない状況なのは嫌という程に分かってしまう。
そしてもう一つ、この声の主は敵だ。
野生の感と言うのだろうか、私の奥底に眠っている本能が、この声の主とは絶対に戦うなと言っている。
「ここにいる鬼はどうしたのかな、僕達はそいつに用があって来た訳だけど」
無論、君にも用はあるけどねと付け足して、朝さんは三日月刀の切っ先を、声の主がいるであろう闇の向こうへ向けた。
朝さんは既に臨戦態勢だ。
「彼はあまり美味しくなかったよ、雑味が多くてね」
「……喰ったのか、鬼を」
朝さんの声に、凄まじい威圧が宿る。
鬼を喰らったとは、一体どういう事なのだろう。




