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暗雲立ち昇る
「おやおや残念、来てしまいましたか」
暗闇の向こうから、人を小馬鹿にしたような笑い声が聞こえてくる。
「……なるほど、お前がそうか」
まるで、念願の仇敵を見つけた合図のように、朝さんは三日月刀の鍔をカチャンと鳴らした。
決して朗らかとは言えないが、つい先程まで笑顔私と会話していた彼とは、全くの別人になっている。
「ふむ、お姉さんは一緒じゃないのかね」
声の主は姿を現そうとしない。
そればかりか声すらも、まるで周囲全体に響き渡るように耳に入るので、声の出所を探ろうにもどこにいるのか把握できない。
おそらくは、朝さんも正確な場所は分かっておらず、僅かに感じとれる気配だけを頼りに、警戒をしているのだろう。
「まぁね、いつも一緒って訳じゃあ無いから」




