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引き締め
「さっきのは小兵に過ぎない、だからここからが本当の正念場だよ、絶対に気を緩めないでね」
朝さんの声が、洞窟内に軽く反響しながら私の耳に届く。
「あれで小兵って……」
正直、私にとってアレがボスの感じだったのだが。
あれからしばらく歩いているが、似たような強さの鬼に二度も遭遇してしまった。
二体とも朝さんが、屠ってくれたけど。
相変わらず私は大した役にも立たず、攻撃をなんとか避けるので精一杯だった。
洞窟内を満たしていた饐えた臭いから解放されたのは、大変喜ばしい事なのだが。
今では、まだ臭い方が数倍マシだったと、心底から言えるだろう。
「あんなのが、まだまだいるって言うんですか」
私は呆れ気味に、朝さんに質問を投げた。
すると、彼は歩きながら余裕たっぷりに、勿論と発してこっちを振り返った。
その表情はまるで、本番はこれからだと言わんばかりの、意地悪と自信に満ち溢れた笑みだ。




