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無謬
突如、洞窟内に稲妻のような轟音が響いた。
「ッッッ!?」
先制を切って繰り出された朝さんの一閃を、鬼が辛うじて金棒で防いだのだ。
しかし、思いの外威力が凄まじかったらしく、鬼は踏ん張った足で、線路よろしく二本線を地面に引く事となった。
それはにわかに信じ難い光景だ。
少なくとも、常人の三倍は身長があろうかと思われる鬼を、せいぜいが百七十センチそこらの、少女と間違えられてもなんらおかしくないであろう美貌の男の子が圧倒しているのだ。
空想であるならともかく、現実ではまず起こりえないであろう光景だ。
「まだまだ!」
握っていた金棒から直に伝わってきた振動で、僅かに態勢を崩してもたついている鬼に、朝さんはすかさず追い討ちをかける。
肩、首、胴、腕、足と。
手に持った三日月刀を、相手の急所へ走らせては、まるで新雪のように容易く断ち切る。
その一閃一振りには、一切の躊躇も迷いも感じられない。
ランプの淡い光を反射しながら、中空を縦横無尽に駆けまわる刃の銀色は、まるで真っ白な花びらを連想させる。




