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奇襲
「小賢しい!」
言って、朝さんも闇の向こうへと姿を消した。
金属同士の擦れあう音が洞窟内に響く。
闇の中でいくつもの火花が咲いて、すぐに散っていく。
圧倒しているのか、押されているのか、私の目では到底、捉える事などできはしない。
おそらく、金棒と刀が絶えまなく打ちつけられているのだろう。
「動けないか」
なんとか、まともに動けるようになるまで回復する事ができた。
けど、今の私には何もできない。
あの鬼と私とでは、明らかに実力が違いすぎる。
私はまだまだ、腹立たしい程に実力不足だ。
あれだけ汗水を流してどれ程強くなっても、結局あれほど恐ろしい妖怪には全く敵わないとは、なんて皮肉な。
所詮は少し死ににくいだけの人間という事か。
「けどまぁ、今は弱気になってる場合じゃない」
口惜しいが、私ではあの鬼に敵わない。
だから、今は私にできる事をしよう。




