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知らぬ間に

 屋敷に帰るまでの道中 車内。


 どうりでおかしいと思った。カマイタチにしてはありえない威力だったし。


 いつのまにかすこし切れてるレベルじゃなかったもん。いつのまにか首がなくなってるレベルだったもん。



 私は頬杖しながら窓の景色を見て、不満の炎に身を焦がしていた。



 助手席で苦笑いしている夕闇さんはさっきから私をなだめようと色々と話しかけてくれるけど。

 それは荒ぶる炎に油をかけるのと同じなんだよねぇ。


 オマケに『詳しい事は帰ってから』と言って全然教えてはくれないし。


 私、危うく死ぬところだったんだよ?


 いくら私を試すためとは言ってもねぇ。限度ってものがあるでしょ。



 そんな風に心中で愚痴っていると窓の景色に碧色の髪を風に流している少女が目に映った。



 ほぇ〜、キレイな髪。私もあのくらい髪の毛伸ばそうかなぁ。


 などと浮かれている私はふと気づく。


 にしてもこんな山道に一人で何してるんだろう。とくに遊べるような物も場所もないのに。

 服がキレイだから遭難ってワケじゃあ無さそうだど。


 少女の前を通り過ぎる。その時向こうの方を見ている少女の顔が少しだけ垣間見えた。


 へぇ〜、これまた美人な子だなぁ。でも気のせいか誰かに似ているような......。



 すると車は急ブレーキをかけてその場に停車した。



 ほぇ? なになに? 動物でも通ったとか?

 ブレーキのショックで態勢を崩した私は慌てて前のガラスを覗いた。


 すると車の前にさっき通り過ぎた少女が立っていた。あれ、さっき通り過ぎたはずなのに。


「あれ? なんでこんなトコにいんのよ」


 ドアを開けて夕闇さんが親しげに少女に駆け寄っていく。知り合いなのかな。


 遠くで話してるからよく聞こえない。何話してるんだろう。


 私は運転手さんにあの少女のことを訪ねた。


「夕闇さんの友達......ですか?」


 すると運転手さんは優しく礼儀正しい態度で対応してくれた。


「いえいえ、あの方は夕闇様の......」


 その時、突然に私の横のドアが開けられた。

 開けたのは先程の少女。ニコニコしながら私を覗くように見つめてくる。


「あ、あの、何でしょう」


 思わず声が少し引きつっちゃった。

 まぁ前髪と前髪が触れあってしまうくらいの距離でジロジロ見られたら誰でもそうなるよね。


「ふ〜ん、君が例の......」


 塾れたブドウのように水々しく清らかな声だ。

 少女はゆっくりと顔を離して、謝罪を始めた。


「ごめんね、噂に聞いた君を一目見たくてつい観察にふけってしまった、先程の無礼をどうか許して欲しい」


「え、は、はい、ど、どうかお気になさらず」


 い、意外と礼儀正しいな。すこし対応に困るタイプか。

 悪い子ではなさそうだけど。


 というか『噂に聞いた』ってどういう意味だろ。

 そもそもこの子誰?


「ん? ああ、そういえば自己紹介がまだだったね、僕は......」


「全員!! 緊急退避!!」


 少女が名乗ろうとした時、夕闇さんが私を抱き抱えて遠くへジャンプした。軽く十メートルは超えていると思う。


 すると崖になっている上の方で何かが転がる音が聞こえてきた。嫌な予感しかしない。

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