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不安
私と朝さんを残して、皆は来た道を帰っていった。
「さて、じゃあ僕達も行こうか」
「あの、本当に大丈夫でしょうか」
その一言で、彼の足はピタリと止まった。
この後に及んだ発言で、怒らせてしまっただろうか。
彼はゆっくりと振り返る。
「なあに、成るように成るよ」
言って、彼は再び歩き出していく。
情けない、思わず不安の言葉が漏れてしまった。
……でもまあ、無理もないか。
おそらくただの下っ端だったであろう鬼に対して、私は危うく屠られてしまうところだったのだから。
今も脳裏に、その時の恐怖が酷く根づいている。
果たして、私はまともに戦えるのだろうか。
いくらなんでも、今回は相手が悪すぎる。
私は、朝さんや夕闇さんみたいに強くもないし、頭も回らない。
敵に追い込まれたり、思わぬ事態に陥ったりしたら、当然パニックにもなってしまう。
それに、傷が治りやすくても死なない訳ではない。
治す暇もなく、徹底的に攻撃されたらおしまいだ。
……しまった、考えれば考えるほど体の震えが止まらなくなってきた。
背筋の奥を氷で冷やされてるみたいだ。




