出で立ち
ポタリポタリと、赤い雫が滑らかな刃を伝って落ちていく。
「やぁ、少し遅かったねぇ」
ランプの光に照らされた朝さんは、僅かに狂気じみた笑顔で私達を出迎えた。
その足元には無数の鬼の亡骸が転がっている。
「一人で、全部やったんですか?」
私の問いに、朝さんはいいやとかぶりを振る。
彼が言うには、まだ親玉を見つけていないとの事。
「今すぐ傷の手当てを!」
言って、葉桜さんは慌てた様子で救急箱を持ちながら、血まみれの彼に歩み寄る。
彼が身につけている服には、赤い斑点と川のように縦に長太い赤色が、鎖骨の辺りから膝下までビッシリと染み付いていた。
尋常ではない血の量だと見てとれる。
だが、服にほとんど損傷が無い事から、彼の皮膚が裂けて付いたモノではないだろう。
つまり、全て返り血だ。
朝さんは手のひらを中空に掲げて、静止の合図を葉桜さんにして見せた。
それを見た葉桜さんは、ゆっくりと歩調を緩め、やがて歩みを止める。
「そんな事より、今は目の前の敵だ。 戦える者は何人いる? こんな劣悪な場でも、いつも通りの動きができる者だ」
冷静に、けれど放たれる言葉は流麗に。
彼はまるで、自分の部屋で友達と話しをするかのように、これからの動きを説明していく。




