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血道
ランプの光を頼りに、暗い道を進んでいく。
洞窟の中は、そこかしこに飛び散った鬼の血と亡骸で、常に異臭が満ちていた。
鉄と生物が腐っていくような臭い。
「喉が焼けてしまいそう」
誰に言う訳でもなく、私は独りごちる。
……あまり、ここで長居はしない方が良いようだ。
呼吸をする度に、喉元が焼けるように熱くなっていくのが分かる。
おそらく、あと数時間くらいこの洞窟内で道草を食っていたら、たちまち肺が腐ってしまうだろう。
もしくは、内臓のどこかに支障をきたす。
今、この洞窟内は酷く不潔だ。
辺りに転がっている鬼の亡骸は、常に中空を漂っている菌達の格好の住処になり得る。
このような場所で出血性の怪我などをすれば、たちまち雑菌に触れて、感染症になりかねない。
破傷風にだってなるかもしれない。
霧状のアルコールをかけた所で、大した効果は得られないだろう。




