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積み木崩し
洞窟の中も、似たような光景だった。
ランプのオレンジ色に照らされた内部は、鬼の亡骸とその血液で、派手に散らかっている状態だ。
地獄絵図とは、まさにこの事を言うのかもしれない。
鼻腔を爪楊枝で刺されるような、鋭い痛みを覚える程の異臭もかしこに立ち込めている。
私は怖いものみたさに、手に持っているランプを鬼の亡骸に近づけて深く観察しようとした。
すると、葉桜さんは私の肩を掴んで、やめとけと言いながら半ば強引に後ろへ引っ張った。
親が子供を躾ける時に言うような、重く厳しい声色だった。
「これ全部、朝さんが?」
亡骸の数は、照らされた近くだけでも五体はある。
そしてそのどれもが、体のどこかのパーツを失っているモノばかり。
死因は間違いなく、斬殺だ。
ドラム缶のように太い鬼の胴体が、包丁で真っ二つに切られた大根のように地面に転がっている。
大量の赤色を地面に吸わせながら。
「ああ、間違いないよ」
葉桜さんは無表情な顔つきで答えた。




