カマイタチの太刀筋
カマイタチって、たしか、いつのまにか服とかが切れてるアレか。たしか、本体は鎌を持ったイタチだったかな。
「ボーとすんな! 三昧におろされたいの!?」
「ごっごめんなさい!」
私は慌ててその場から離れて、車の後ろへ隠れた。
さてどうしよう。
なにせ、相手の姿が見えないとなると手出しの仕様がないしなぁ。三匹もいるし。
まぁ、見えたところで私に何ができるというわけでもないから、攻撃は夕闇さんにやってもらうしかない。
何かいい方法があれば......ん? 手から血が垂れてる。
ああ、さっきの攻撃が手にかすってたのか、傷はそんなに深くないみたいだから良かったけど、血がすこし出てきてる。
あれ、そういえば諸説あるけど、たしかカマイタチに襲われてできた傷は血が一切出ないはずじゃなかったっけ?
でも、今さっき私が見たあの大きな爪痕は喰らっていれば間違いなく致命傷クラスのモノだった。
本当にカマイタチなの? 夕闇さんの見間違い?
......いや、今はよそう。
正直、疑問の雨は止まないけど。今はとにかく夕闇さんにできる最大限のサポートにひたすら徹しよう。
今の私にできる事。それは......。
「これしかない!」
私は車のドアを開けて、いきおいよく車内へかけこむ。
敵が本当にカマイタチなら、車に必ずついてるアレで、夕闇さんならおおよその位置は分かるはず! あとは夕闇さんに任せる!
あった!
私はソレを鷲掴んで夕闇さんがいる前方へ思いきり投げた。
火をつけて。
「は、発煙筒!?」
車の運転手が目を見開いてそう言った。発煙筒はモクモクと白い煙を吐きながら夕闇さんのいる向こうの草原へポスッと落ちてくれた。
やった! 成功だ!
あとは夕闇さんが私の作戦をすぐに理解してくれれば......ってそんなのお見通しか。
夕闇さんはわずかに揺らめきを乱す煙の位置を見逃さなかった。
手に持っている一メートルくらいの赤い矢を鞭のようにしならせて、そこにいる私には見えない何かをパァンと鳴る破裂音とともに見事、撃ち落としてくれた。
しかも三匹同時に。なんだかすこしあっけないような気がするけど。
しかしそんな事はお構いなく、私はハイテンションで夕闇さんにかけよって感謝感激を伝える。
「やりましたねぇ!! しかも三匹同時に!」
すると夕闇さんはとてもニコニコしていた。
「うんうん、発想力、行動力、冷静な状況の把握、どれも申し分なし! 合格!!」
ん? 合格?
私が疑問に片眉を吊り上げていると夕闇さんは私の背中をバシバシと痛いくらい叩きながら話しかけてきた。
「これから末永くヨロシクね! 今日から君はウチらの一員だ!」
ウチラ? 一員?
さらに疑問を顔に張り付かせる私に、夕闇さんは上機嫌でさらに言葉を言い放ってくる。
「だぁ〜か〜ら〜、試験だったの! これ全部あなたの実力を測るためのデッチアゲだったの!」
デッチ......アゲ......?
私の思考は完全にフリーズした。