色の亡い声
カチャンと、鍔の鳴る音が洞窟内に響いていく。
「だ、大丈夫か! 嬢ちゃん!!」
この班の副リーダーである葉桜さんが、急いだ様子で私に駆け寄ってきた。
葉桜さんは、まるで糸切れた人形のように動かなくなった私の両肩を掴み、ブンブンと前後に揺すって何度も私を呼びながら、無理矢理起こしてくれた。
多少の目眩が起きてしまったけど。
「下がってて葉桜、危ないから」
まるでそこらの小石や岩に話しかけているように、彼の声色には一切の感情を感じない。
実はロボットなのだろうか、という疑問を抱く程に。
葉桜さんは張った声で一言ハイと返して、私の手首を引っ張りつつ朝さんから離れていく。
多少戯けた足取りで、私は後ろにいる班のみんなと合流した。
「怪我は無いかい?」
心配そうな顔で、葉桜さんは私に尋ねる。
私はすぐに大丈夫です、と返すと葉桜さんは安心しきった表情を見せた。
まだそこで、鬼がこちらを恨めしく睨んでいるというのに。
「俺達はあくまでサポート担当だ、実際に鬼を葬るのは朝様だよ」
私の思考を察したのか、葉桜さんは安心しなさいと言わんばかりの笑みを浮かべながら言葉を紡いでいく。
「嬢ちゃんは無理しなくていい、まだまだ経験が浅いからなぁ」
彼の目には尊敬と安心が宿っていた。
朝さんを心から信頼し、敬愛しているのだろう。
どのみち私では、鬼に歯が立たない。
やむなく私は現実を受け入れ、遠くから見物する事にする。




