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手綱
「似ているけど、別物だよ」
朝さんの声には、鉄球のような重みを感じた。
妖怪の本拠地にたどり着いた事で、朝さんにスイッチが入ったのだろう。
いつのまにか、視線がナイフのように鋭くなっている。
おそらく、今の朝さんにボウガンや弓などを放ったとしたら、その弦が矢を押し出すよりも先に、持ち主の腕ごと首を断ち切ってしまう。
そんなイメージを、頭と体が警告している。
少なくとも、絶対に無事では済まないだろう。
さっき彼と目が合いそうになった時、脊髄の温度が急激に冷えていくような寒気が、走ったのを覚えている。
今の彼には、迂闊に話しかけない方が良さそうだ。




