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名明け
ほんの数時間前まで話していた顔だ。
忘れる筈もない。
「ようやく、正体を教えてくれるんですね」
少女は口端を吊り上げた。
「ああ、ようやくね」
少女は楽しそうに微笑んでいる。
まるでトランプのババ抜きで、相手がジョーカーを引いてしまった時のように。
「紹介するわ、コイツは誘意 朝。私の弟よ」
なるほど、妙に親しいと思ったら弟か。
確かに言われてみれば、二人はとてもよく似て……る。
弟……………
「え………弟?」
聞き間違いだろうか。
いや、聞き間違いだろう。
きっと、弟と妹を聞き間違えたんだ。
冷静に考えて、こんな可愛い子が男の筈がない。
「あー、まぁ、そうなるわよね」
夕闇さんが私の表情を見て、もうたくさん見てきたその表情、とでも言いたげな目をしている。




