引く者
その日の仕事は、最悪だった。
小さなダンゴムシのような生き物を、ひたすらに狩る仕事。
生き物の血を吸うらしく、放っておけば辺りの生態系を乱すというので、ひたすらに鎌を振るった。
大きさはソフトボール程度で、動きはとても鈍い。
ただし、ネズミ一匹の血で三匹は増える。
私が着く頃には、もう既におぞましい程の群れを作っていた。
まるで葡萄のように木にこびりついて、よく見るとそれがモゾモゾと動いていた。
全身に鳥肌がたったのを覚えている。
まだ、芋虫の方がマシだと思える程に。
しかしもう後戻りはできない。
私は震える足で一歩、蠢く木々に近づいた。
すると、そのダンゴムシの蠢きはピタリと止まる。
まるで木の表面に、瞬間的に固定されたように。
そして勢いよく、爆発的に飛び散った。
無数のダンゴムシが、ソフトボールのように丸くなって、大砲の玉のように勢いよく飛んでくる。
飛んでくるスピードは、私の目でも十分捉える事はできる程度だったが、数が多すぎた。
全て撃ち落とすのは、間違いなく不可能な数だ。
すると、私の正面に一発飛んでくる。
私は反射的にソレを大鎌で、真っ二つに切った。




