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紡ぎ
「気晴らし……ですか?」
途端に、少女の妖しい笑みは薄っすらと消えてゆく。
まるで押したスポンジが、元の形に戻っていくように。
「そうそう」
実にリズミカルな、ノリノリの返事だった。
明らかに誰が聞いても、薄ぺらい嘘だと分かる程に。
少女は依然としてニコニコとしている。
一見して親しみを覚える笑顔だ。
だが目の慣れた者なら、もしくは勘の鋭い者ならば、すぐに分かってしまうだろう。
この笑顔は、只の作り物なのだと。
より精巧に。より親身に。より勘違いしやすく。
気づかないうちに、隙をさらけ出してしまうような。
一流の商人が使う、客人に振りまく笑顔のように。
「そう……ですか」
得体の知れない恐怖に、私は屈してしまった。
素顔が見えない、闇に埋もれた怪物。
そんなイメージがこの少女に重なる。
敵なのか? 味方なのか? それとも……
「あー、それとね」




