一族の者として
「おっと、誤解が無いように詳しく説明しておこうか」
お父さんは涙を手で拭って事情を話してくれた。
まるでこれから巣立つ我が子を心配するかのように。
要約するとこういう事になる。
一つ、私は今日からこの家に寝泊まりする事になる。いわゆる居候というヤツだ。
二つ、妖怪を退治しなくてはいけない。
三つ、今まで住んでいた家に帰ってはいけない。
(ただし、よほどの事情もしくは責任者の了承を得た場合は別とする)
四つ、どんな時でも妖怪退治と人守を最優先に動かないといけない。
五つ、目立った行動は控えること。
細かいことを除けばこの五つが絶対に守らなければいけないルール。破ったら何かしらの罰が用意されている。
拒否権はない。嫌がってもむりやり連れて行かれる。
納得できるはずもない。
しかしその事をお父さん達に伝えても一向に首を縦にふらない。
「......まぁ、そういことよ」
少女は私の肩に手をかぶせ、同情まじりの一言を放った。
もう諦めるしかないの?
あの時神社なんて行かなければよかった。もう怒る気力もないや。
だったら受け入れよう。私の日常は今日で終わっちゃうけど、少なくとも学校や友達との関係は変わらない。
それがせめてもの救いだ。
本当はあんなバケモノ達と戦うなんてまっぴらゴメンだけどね。
「分かりました......今日からここでお世話になります」
その言葉を言うとお父さん達は泣きながら喜んでいた。
まぁいいか。住めば都という言葉を信じよう。
「お別れはもういい?」
赤い瞳の少女は尋ねる。
「......うん」
元気な返事なんてできる心境じゃない。
そのことを察してくれているんだ、この子は。
「じゃあ、とりあえず家の中を案内するから来て」
私はお父さん達にじゃあと言ってその場を後にした。