碧の君
突然、誰かに背中をピシャンと叩かれた。
「ヒャッ!」
思わず、情けない声が漏れてしまった。
慌てて振り返ると、そこには長い碧色の髪を風に流した少女が立っていた。
「えっと、どちら様でしょうか?」
少女はニッコリと笑い、顔を近づけてくる。
まるで珍しい骨董品などを、覗き込むように。
もしかして……品定めされてる?
私が率直に感じた印象は、そんな感じだった。
私はこの少女の事を全く知らない。
けれど、これだけは分かる。確実に。
「貴方、相当お強いんですね」
「ん? ん〜どうかなぁ」
あからさまな態度。
隠す気はないって事かな?
……もしかして、屋敷の中に入り込んだ敵?
だとしたら、相当ヤバイ状況だけど。
でも、不思議と敵意のようなモノは感じない。
そもそも、私を襲うなら声なんてかけないし。
「そんな警戒しないでよ、君と会うのはこれで二回目だから」
二回目?
いや、そんな筈は無い。
私はこんな少女は知らない。
……それとも、ただ単に私が忘れているだけか?
だとしたら、今の私は相当失礼なヤツなんだが。
「ほら、車での帰り道に」
車……帰り道?………………あ!




