灰とリンゴ
ああ、燃えてる。
メラメラ、ギラギラ、バチバチ。
いや、散っているのか……
桜の…花弁……
妙な感覚だ、こうして地面に立っているのに、まるで宙に浮いてるような浮遊感に襲われる。
単なる気分か、それともこの大地は幻か。
まぁどうでも良い事だ、私にとっては。
この甘ったるい香り、虫唾が走る。
ネバッと鼻腔にまとわりつくような、自分の醜悪な部分を包み隠すような、甘ったるくて胃もたれしそうな香り。
香りの元は……あの桜か。
ならば今すぐに……
☆
「あれ、私は……」
気が付けば、前にも味わった事のある布団の感触。
体が重い……まるで鼈甲で固められているかのよう。
そしてこの倦怠感。
確か、吸血鬼と戦って、一撃をお見舞いして、それから……
ああ、視界と頭がボンヤリする。
考えと記憶がまとまらない、重症だなこりゃ。
もう一回寝るか……
私は再び重い瞼を閉じて、闇に身を委ねる。
私の意識は、泥の中へゆっくり沈むように消えていった。
☆
「ん……」
ふと目が覚めてしまった。
頰に当たる風が冷たい、外はもうすっかり夜中か。
二度寝する前はまだ日中だったから、およそ四時間くらい寝てたのか。
体はまだ重いけど、寝る前程じゃない。
気晴らしに、外の風に当たりに行こう。




