ひび割れた日常
順を追って説明しよう。
私は夜中、なんとなく神社に行くと、そこには手のバケモノがいて襲われた。しかし、バケモノは謎の赤い光によって消滅。私は間一髪助かったわけだ。
その後、赤い瞳の少女の家に連れていかれ、現在、畳の上で正座して少女を待っている状態である。
正直、今すぐにでも帰りたい。
バケモノから助けてもらったけど知らない人だし。
お母さん達にも連絡してないから今頃心配してると思う。スマホは家に忘れて来ちゃったからなぁ。
仕方ない、電話を借してもらおう。
そう思って立ち上がろうとした時、襖が勢いよく開いた。
「よ! 怪我はない?」
私を助けてくれた少女だ。改めてみるとこの子美人だなぁ。
まぁ今はそれよりも、電話を借りよう。
お母さん達に連絡しておかないと警察を呼びかねない。
「あの〜電話を貸して欲しいんだけど」
申し訳なさそうに、エサをねだる子犬のように私は電話を催促した。もちろん、親に連絡をしなければいけないと理由も添えて。
「ああ、親御さんなら来てるよ、家に」
「え?」
え? 来てる? ここに?
身分を証明するものは持ち合わせていない。もちろん、この子に家の電話番号も教えていない。どうやって招いたの?
疑問の嵐が止むことは無い。むしろ増えていく。
そして言いようの無い不安と恐怖を抱いた。助けてもらったけど、それとこれとは別。私は恐る恐る聞いてみる事にした。
「あの、なんで貴方は......」
「あ〜、そこんとこは貴方の親御さんに聞いて、私から説明するのも面倒だし」
頭をかきながら少女は言う。面倒っていうのはどういう事? 親御さんに聞け? 私の親が何か知ってるの?
また謎が増えてしまった。
分からなさすぎる。しかしまぁとにかく、今はこの子の言う事に従ってみよう。なんとなくそれで何かが分かる気がする。
私は親のいる居間に案内された。
居間に入る襖を開けると長方形の木のテーブルの前で座っているお父さんとお母さんがいた。
本当にいた。
動揺してその場から数秒動けなかった。そんな私を見るとお父さんは開口一番にこう言った。
「お前も、ようやく選ばれたか」
まるで自分の育てている弟子か後輩が一人前になったなと言わんばかりの笑みでそう言った。
選ばれた? 何に?
「良かったわ、本当に、今日はお赤飯炊かなくちゃ」
お母さんは目に涙を浮かべていた。
赤飯て何か祝いごとがあった時に食べるものでしょ? いい事なの?
「ちょっ、ちょっと待ってちゃんと説明して!」
私はすかさず訪ねた。すると思いのよらない言葉が返ってきた。
「今日からお前はウチの子じゃ無い、だから全身全霊でお勤めを果たして来い」
言ってる意味が全く分からなかった。