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仕方がない

 着いた場所は、この町一番の老舗が立ち並ぶ商店街。

 飲食店や服屋など、この十六夜町で日用品を買い揃えるならば、誰しも一度は足を運ぶと言われている。


 しかも、どの店も庶民の(ふところ)事情というモノをよく理解しているから、品物が破格的に安い。

 加えて店員さんの人柄も良い人ばかりときた。


 それらも人が訪れる要因の一つとなっているのだろう。


 私にとっても、かなり馴染みの深い場所でもある。


 しかし、こんな所に妖怪なんているのか?

 日中は人通りが多いから、妖怪なんて出たらそれこそ大騒ぎになってると思うんだけどなぁ。


「情報によれば、最近、ここ周辺で行方不明者が多発しているようです」


 今回はまず、妖怪の仕業か否を探す所から始めないといけない。

 手っ取り早くするなら、まずは聞き込みからかな。


 私は夕闇さんに聞き込みの提案を述べる。

 すると夕闇さんはグッと親指を突き立ててOKと言った。


「よし、じゃあ手分けして情報を集めよう! 私は一人で動くから、君達は二人で行動してね」


 うわぁ、何言ってるんだこの人!

 私と火摺さんが仲悪いの知ってるクセに。

 絶対、気まずくなって聞き込み所じゃないって。


 それだったら、私一人の方がまだマシだ。


「い、いや、だったら私一人でも……」


「命令だよ、二人で行動しなさい! 良いね?」


 最早、無理ゲーですわコレ。


「……はい」


「了解しました」


 先が思いやられるなぁ。



 ☆



 肉屋の店主、八百屋のおじさん、魚屋の店員に…etc。


 私は火摺さんと、あらゆる店舗に聞き込みをした。

 顔馴染みの店から、初めて訪れる店までほとんどくまなく。


 任務が順調なのは嬉しい、しかし道中はやはりと言うべきかかなり気まずい。


 ずっと無言なんだもん……


 まぁそれはともかく、聞き込みの収穫はほぼゼロだった。

 聞いた内容は、ここ数日で変なモノを見なかったか? というモノ。


 コチラもやはりと言うべきか、誰も見ていないと言う。

 まぁ、見てたら大騒ぎしてるだろうしね。


 道のりは遠い……か。

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