結局は
「はぁ……」
屋敷の廊下で、重いため息が漏れてしまった。
結局、十回中、一回も勝てなかった。
そればかりか、傷一つ付けられないとは。
ここ! と思って攻めても、突然消えるんだもんなぁ。
そんで、目で探してる最中に、後ろからドスッと一撃。
アレをやられたらもう、どうしようもない。
例え運良くガードできても、追の攻撃で沈む。
次までに対策を練らないと。
今後の課題だ。
……………………改めて考えてみると、どうして私は今までの出来事を受け入れているのだろう。
つい、この前まで普通の女子高生だったのに。
いきなり、妖怪だのなんだのと言われても、到底受け入れ難い話の筈なのに。
何故か、違和感なく受け入れている自分がいる。
多分、普通なら最初の戦闘で泣いたり、喚いたり、もしくはその現実から逃げ出したりするのがセオリーだろう。多分。
というか、そもそもなんであの場に夕闇さんが居たんだ?
偶然? いや、夜中の神社に弓持って、屋根に登るヤツなんていないでしょ。
正解ならドン引きだけど……
それに今思えば、あの狸もなんだか妙な違和感があったような気がする。
なんていうか、初めから私を見てた? みたいな。
「……もしかして、全部仕組まれてた?」
可能性が無いとは言いきれない。
でも、もし仮にそうだとして、今更それがなんだという話でもある。
だってもう、私にはここしか居場所が残されていないし。
そもそも、簡単に辞められるような雰囲気じゃあないんだよなぁ。ここ。
一昔前の、命令は絶対遵守、できなければ死、みたいな感じで。
「まだ死にたくないよぉ」
せめて普通に学校には行かせて欲しいモノだ。
失った青春は帰ってこないので。
まぁ、無理な話だけど。
……とりあえず、保留にしておきますかねぇ。この内容は。
タブーな案件かもしれないし。
この事にはできるだけ、触れないでおこう。
「はぁ……今日は自分の部屋に帰って寝よう」
ため息が尽きない日は無い。




