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退屈な世界

 入院(屋敷の中で集中治療中)というモノはなんとも退屈な日々だ。


 右腕は複雑骨折。

 左足は膝下からくるぶし辺りまで走る深いヒビ。


 担当の医者が言うには絶対安静だそうだ。


 まぁ、一刻も早く治して現場復帰しろという事だろう。

 おかげで私は、ロクに歩く事すらままならない。

 それに加えて出される食事も、基本的に胃に優しいモノばかりで量も少なく味も薄い。


 介護されている老人のような気分になってくる。


「寝るか」


 私はゆっくりと瞼を閉じる。

 そして徐々に深いまどろみに意識を溺れさせた。



 ☆



「ん……あれ? ここって………」


 何もない広大な野原、暗い夜空に絶え間なく瞬く星々。

 なるほど、どうやら私はまたここに来てしまったようだ。

 まさか夢の中でも退屈な世界とはね。


 でもまぁ、手足の怪我は治っているのが幸いかな。

 夢の中だと何してもいいし。


 とりあえず、まずは歩く事にした。

 どこまでも続くなんて事のない野原をただひたすらに。


「……何も無いなぁ」


 行けども行けども何も無い。

 せめて美しい花が咲いている木でもないものか。


 どんだけ貧困なんだ、私の脳内は、というか想像力?


 地面を踏みしめる感触はやたらリアルなのに、あまりにもその他が乏し過ぎる。

 登場人物の一人くらい出せってーの。


 ……………疲れた。


 疲労までリアルなのか。

 夢の中でくらい、スタミナは無限にして欲しいな。


 ドッと私は地面に倒れこんだ。


 目の前は満天の星空。

 地面は柔らかな草々のベッド。

 これがなんとも、心地いい。


 前言撤回、シンプルだけど、これほど素晴らしい世界は他にない。

 少なくとも私はそう感じた。

 僅かな風で擦れあう草同士の音が今は子守唄のように聞こえる。


 思わず寝てしまいそうな私は、夢の中でも寝てしまうのかと僅かに苦笑を浮かべた。


 まぁ、今はゆっくり本能に身を委ねるのも悪くない。

 眠いなら寝てしまおう。


 どうせ…夢の中……だし…ね。



………………………………………………………………


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