なんとか
「なんとか……なる………もんだなぁ」
今、私は石を投げていた鬼達を殲滅し終え、岩に背もたれながら休んでいる。
結局、奇襲が上手くいったのは最初だけだった。
思ったよりも早く、鬼達は冷静さを取り戻してしまい、敵陣のほぼど真ん中で暴れていた私は、四方八方から来る敵を相手にするハメになった。
苦戦の末、なんとか全て倒す事には成功したものの、おかげで私はこのザマだ、右腕は金棒で砕かれて、左足は投石が直撃してからピクリとも動かない。
この足では敵から逃げる事も叶わないだろう。
夕闇さんは向こうで今もなお激しい戦闘を繰り広げている。
ならばせめて、私は邪魔にならないように岩陰に隠れていよう、唯一の武器である大鎌も刃こぼれが酷くて使い物にならない。……まぁ、今はせいぜいが杖代わりといった所か。
とりあえず、今は安全そうな場所へ……
私はポケットの中のハンカチを取り出して端を噛み、左手と逆方向に顎を引いて縦長状に引き裂く。
そして鎌の握り手を外して、折れた足に挿し木代わりとしてグルグルに巻きつけた。
こんなボロボロの状態で敵に見つかれば即ゲームオーバーは免れない、一刻も早く安全な所に行かないと夕闇さんの戦闘の妨げになる。
私は頬ずるように岩壁を歩いて、なんとか夕闇さんと戦っている鬼の親玉から死角になりそうな岩陰に身を置いた。
あとは夕闇さんの無事と武運を祈ろう。
私にはもう……できること…はな……い……
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☆
最後に覚えていたのは、鉛のように重たくなった瞼と煙のように私の頭を包む睡魔に呑まれて気を失った事。
そして、揺りかごのような振動と温もりだった。
「ん……………ここ……は」
気がつけば私は、斜め反りのベッドで寝ていた。
ただし、左足は布で吊るされ宙吊り、右腕は硬い石膏で、首元に巻かれた布で同じく宙吊り。
ほのかな畳の匂いと見覚えのある天井。
そこでようやく私は屋敷に帰ってきたのだと自覚した。




