鬼鬼一発
まずは、あの十二メートルくらい先にある大岩に辿りつく必要がある。
迷ってる時間は無い、多少のリスクは覚悟しよう。
私は岩陰から勢いよく飛び出し、そのまま大岩を目指して直進する。
当然、鬼達は絶好のチャンスと捉えて一層激しく無数の石を投げまくる。
投げられた石は私の体を掠めてどんど擦り傷を増やしていく。
擦り傷程度で済んでいるのは、咄嗟にわたしが体を少しずらしているからだ。
そして全身に軽い傷を受けながらも私はなんとか大岩に辿りついた。
大きさと重量は申し分ない。
おそらくこの方法が使えるのはこの一度だけ、失敗すれば最悪死ぬ、もしくは状況が今以上に悪化してしまうかもしれない。
でも、今はこの方法しか無いのも事実。
やるしかない。
私は鎌のもちてを外して、もちての中に入っている黒い粉がぱんぱんに詰まった袋を取り出した。
そしてすぐにその袋を破いて、鎌の刀身にパラパラと振りかける。
すると鎌の刀身は鈍い銀色から真っ赤に染まりはじめる。
袋の中の粉を全て使いきる頃には、刀身は完全に赤く染まっていた。
私は元の位置に外したもちてをつけて、深呼吸を始める。
三回程くらい深呼吸を繰り返した私はもう覚悟を決めていた。
そしてすぐに行動を開始する。
大岩の後ろに立って、赤く染まりきった大鎌を大きく大きく横に振りかぶって一気に叩いた。
そして勢いよく鎌が大岩にぶつかった瞬間、大爆発を起こした。
私の身長を大きく上回る大岩は鬼達のいる前方へ凄まじい勢いでゴロゴロと転がる。
咄嗟に鬼達の何人かは横にジャンプしたり転がったりして避けている者もいたが、少なくとも四人は岩に押し潰されていたのを目で確認できた。
あまりにその出来事が予想外だったのか、鬼達は冷や汗を流しながら慌てふためいていた。
そして私はその混乱に乗じて、鬼達をひたすら狩る。
赤い鎌で近くにいた鬼の首を一閃。
鬼の首は落ちるよりも早く、再び大爆発を起こす。
周りにいた鬼達はすぐに爆発に視線を向けるが、爆発に気をとられて私の存在には気づかなかった。
あと二十はいける。




