鬼退治
……あ、ヤバイかも。
いくらなんでも、この数を私ひとりで捌ききるのは無理な気がする。否、無理!!
逃げよう!!
向かい来る鬼達を背にして、私は全速力で走る。
いくら血の滲むような修行を終えたからって、イキナリ三十人近くの敵が一斉に襲いかかってきたらそりゃあ無理でしょ!
……とりあえず、徐々に減らしていくしかない。
私は駆ける足を止め、振り返りざまに大鎌の一振りをすぐ後ろの鬼に浴びせた。
首元から横腹まで袈裟斬りにされた鬼は膝から崩れて地面に勢いよく倒れこむ。
「まず一匹!」
続けて態勢を低く保ちながら、相手の足元へ滑りこんでそのまま両足を切断。
そして倒れた所を鎌で一刺し。
やれやれ、息つく暇もない。
まぁ数が多いから当たり前なんだけど。
私は額の汗を袖で拭う。
すると頭上に掲げられた金棒が勢いよく私に降りかかった。
咄嗟に私は横へ横転して難を逃れ、金棒を持っている鬼の腕を鎌でバッサリ一閃。
腕を切られた鬼は唸り声を上げながらその場に膝をつく。
今のは危なかった! あと二秒遅れてたら確実にぺしゃんこだった。一旦、距離を取ろう。
じゃないといつやられてもおかしくない数だ。
私は慌てて後ろ向きにジャンプを繰り返して鬼達から距離を稼ぐ。
するとその時、何かが私の頬を掠めた。
掠った所から血が溢れて頬をつたう。
今のは……
私は慌てて後ろを振り向く。
するとそこにはゴツゴツとした石が落ちていた。
まさか……投石?
不運な事に私の予想は的中する。
数秒後に数えきれないくらいの大量の石が雨のように降ってきた。
「マジかよ!!」
咄嗟に私は近くの岩陰にかくれる。
近づけば金棒の餌食。離れれば石の雨か。厄介だなぁ。
弾になる石はそこら中に転がってるから無くならないし。
人ならまだしも鬼の筋力でなげる石だ。
当たったらまず致命傷は免れない。
さて、どうしような。
このままここに立て籠もるって手もアリだけど。
そうすると何人かは夕闇さんの方に行きかねない。
しかし、出ようにもこの石の雨。
これらを掻い潜って行くのはまず不可能。
せめてコチラにも遠距離の武器があれば良いんだけど。
当然、そんなモノは無い。
……………ん? いや、待てよ
これなら、もしかしたら出来るかもしれない。




