お出まし
あと少しでボスの所だ。
途中何匹か鬼に遭遇したけど、持ち前のコンビネーションで難なく片付けられた。
でも、それが続くのはここまでだろう。
ようやく辿り着いた。
ほんのり薄暗い洞窟の壁にどう見ても不自然な鉄の扉。
一見して豪華な装飾が施されたその扉は、明らかに中にいるヤツの実力が示されている。
多分、今までの鬼のようにはいかないだろうなぁ。
できれば、スパッと終わらせてさっさと帰りたいんだけど。
「じゃあ、開けるよ」
「は、はい」
夕闇さんはゆっくりと慎重にその扉を開けた。
途中、扉の隙間から光が漏れだして私は思わず手で目の前を遮る。
洞窟の中なのになんで光が……
そして完全に扉は開ききった。
遮った手をどけて、私は自分の目で中を確認する。
「……マジで」
目に映ったのは十メートルをゆうに越す巨大な鬼。
全身の肌は赤く、頭部から禍々しい二本の角が生えている。
オマケに手にはこれまた大きなトゲ付きの金棒。
見ただけで意気消沈してしまうような体格差。
いくら夕闇さんでもこのレベルの鬼を退治するとなるとさすがに骨が折れるんじゃないかな。
物理的にも、意味的にも。
しかし幸いにも中の空間は広い。
ここでなら私も存分に大鎌を振るえる。
そして私が倒すのは巨鬼の周りにたむろってる鬼達。
小鬼が数十、中級が数匹。
私ではあの鬼は手に余る。いや、余り過ぎる。
故に少しでも夕闇さんを有利にする為に、私は全身全霊でサポートに徹する。
万が一の時の為のモノも用意してるし。
「さて、一丁行きますか!」
伸縮した鎌を瞬時に元の大きさに戻す。
そしてヒュオンという風切る音を周囲に轟かせる。
夕闇さんも武器の大弓を瞬時に組み立てる。
その間およそ二秒!
あっという間に臨戦態勢は完了した。
「ほう、人風情が我ら鬼に仇をなすとは」
巨鬼は不気味な笑顔でこちらを睨みつける。
そしてそのまま腕組みをして、高笑いを始める。
「真に面白き事よ人間! 良いだろう来るが良い、せいぜいその子鹿のような手足で抗うがいいわ!!」
その声が合図となり、周りにいた鬼達は一斉に襲いかかって来た。




