本題と始まり
ズズゥー(緑茶を飲む音)
和室で飲むお茶って良いなぁ。風情があって。
歩いて屋敷まで帰った時にはもう全身クタクタだったけど、今はほんの少しだけそれが和らいだ気がする。
夕闇さんは今、一族の人達にさっき起こった事を報告しに行ってるから、しばらくはのんびりできるかな。
それにしても......
さっきまで起きていたような事が私の日常になっちゃうのかなぁ。
つい二日前までは、どこにでもいる普通の女子高生だったのに。これからはそういう風には過ごせないんだろうなぁ。
何も無ければ学校には通えるけど。
多分、そんな日はめったに無いだろうし。
これからは、この束の間の休息をゆっくり楽しむ事が今の私にとって最大限の安らぎになっていくのだろう。
まぁとにかく、今は待とう。
このゴタゴタが片づくその時まで。
「お待たせ〜!」
夕闇さんが帰ってきた。できればもう少しお茶を楽しみたかったなぁ。残念。
夕闇さんは私と向かい合う形で畳に座布団を敷き、そのままあぐらをかいて座った。
「このお茶美味しいですね」
「ん? ああ! ここで作ってるからね、作りたてだよ!」
へぇ、ここでお茶作ってるんだ。
テレビとかでお茶の葉畑とかは見た事あったけど、生はまだ無いから少し興味あるかも。
「......明日は学校、行けそうですか?」
「......まだ分からない、かな」
試しに聞いてみた事だったけど、やっぱりだったな。
そりゃそうだ。
妖怪は天気みたいに気まぐれらしいから予報はあっても、実際はその日になってみないと分からない。こういう質問はその日の朝に聞くものだな。
「そうですか..................すみません」
「良いのよ、学生が学校に行くのは当たり前! むしろコッチがアンタを引き抜いたようなモンなんだから! アンタはこれっぽっちも悪くないよ!」
......気を使わせてしまったな。まだ会って日は浅いけど、夕闇さんは責任感が強いみたいだから、私に対して悪いと思ってるのかもしれない。
......なら私は。
「夕闇さん、詳しく事情を教えて下さい」
「例え嫌がられても無理矢理教えるつもりだよ、あたしゃ」
夕闇さんの赤い瞳に真剣味が宿る。
もう逃げられないのは分かってる、なら私は、自分の力で立ち向かう。
もう覚悟は決まった。




