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生きる為に。  作者: 井吹 雫
三章
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~試練・1~(2)


「ああ、こうなっていたのか」


 蓮花が走ってきた一本道の先は行き止まりだった。

 しかし先程いた場所からは死角で見えなかったが、突き当たってから見てみると、左と右にそれぞれ下へと続く階段がある。


――確かあの絵の通りだとすると、左が正解だった筈だから……。


 そう考えた蓮花は、左の階段を下ってみる。

 そこまで深くはなく、すぐに階段の先が見えてきた。


――……また扉か。


 一応扉の中も確認してみようと、扉の取っ手に手を掛けた蓮花。

 木で出来ていた扉は建て付けが悪いのか、重みとは違った音を立ててゆっくりと開く。

 中は薄暗かった為よく見えないが、それでも先へと道が続いている事だけは確認する事が出来た。


――きっと、こっちが正解って考えは正しいと思うけど……念の為もう一つの階段も、降りて確認した方がいいかな。あーでも、階段を下りた瞬間に矢が飛んできたりしたら、嫌だな~……。


 映画等でよく見るトラップを色々と想像した蓮花は、とりあえず階段を上ろうとしたところで、聞いたことのない悲鳴と共にものすごい地鳴りが聞こえてきた為、慌てて階段を駆け上がる。


――えっ? なんでっ!


 来た道を見ると、なんと待っていてと頼んでおいた筈の皆が、逃げるようにして走ってきていた。

 その後ろを、けたたましい音を立てて鉄の球が追い掛けてきている。

 慌てて皆を左の階段へと誘導する蓮花。

 地鳴りと共に、どんどんと勢いを付けて近付いてくる鉄の球。

 間一髪のところで蓮花も左の階段へと飛び込んだ為、鉄の球は誰に当たる事もなく突き当たりの壁へとぶち当たった。

 けたたましいその音に、思わず耳を塞ぐ蓮花たち。

 砂埃が舞ってしまった為よく見えないが、球は壁にはのめり込まなかったようで、ゆらゆらと揺れている。


「おい、これ……、ほっといたらこっちに来るんじゃないか?」


 敦の声にハッとする蓮花たち。

 そんな事はお構いなしに、どんどんと反動を付けていく鉄の球。

 慌てて蓮花たちは階段を駆け上がり、鉄の球を押し出そうとする。


「押せ! 押せっ! 踏み潰されるぞ!」


 敦の必死な声が響き渡る。

 このまま蓮花たちがいる方へ球が転がってきたら、一溜りもない。

 狭い階段の中、必死に球を押し出す蓮花たち。

 必死に押した事が功を成したのか、鉄の球はゆらゆらと自身の反動で、蓮花たちが逃げ込んだ階段とは逆の階段へと吸い込まれていく。

 低い音と共に階段を転がっていった鉄の球は、止まる事無くこちら側と同じようにあった木の扉を突き破り、そしてその先で待ち受けていたマグマの中へと落ちていった。


――そうか、あっち側はマグマだったのか……。


 呆然と消えていった先を見つめる蓮花。


――あのままあちら側の扉を開けていたら、下手したら私がマグマの中へ落ちていたのかも……。


 そう想像し、身震いをする。

 すると先程とは明らかに違う何かが、すごい速さでこちらに近付いている事に気が付いた蓮花。

 音の方を見ると、今度は大量の水が蓮花たちへと押し寄せていた。

 次々と息をする間もなくやってくるピンチに、ついに頭の中が停止する蓮花。


「ちょっと! 何してんのよ!」


 皆が大量の水から逃げるように左の階段へと逃げて行く中、固まったように動かないでいる蓮花を、慌てて夏木が引っ張る。

 身体を引っ張られた事で、何とか我に返る事が出来た蓮花。

 そのまま夏木に引っ張られるようにして一緒に階段を下り、先程確認した扉の中へと入ると、それを待っていたかのように水野大樹と宵歌が扉を閉めた。

 しかしこのままでは、あの大量の水は確実に扉を突き破ってきてしまう。

 立ち止まる事無く走り続けた蓮花たちは、ひたすら続く暗闇の先に現れた新たな扉を発見し、その扉目掛けて駆け抜けた。




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