~灯火~
お知らせです!
今まであらすじ文を、第一部のみのあらすじを記載しておりましたが、第二部のあらすじも追加で記載致しました。
その為、今まで記載していた第一部のあらすじ文が多少短くなっていますので、追加分と共にご確認頂ければと思います。
「……やっと来たか」
目を瞑って前へと進んだ蓮花。
そうっと目を開けると、そこにはずっと待っていてくれたのだろう。
腕組みをして蓮花を見ていた鎧塚と、村一帯を綺麗に照らす、宙に浮いていたいくつもの灯火が待っていた。
「……うわーっ! 綺麗っ!」
思わずそう叫ぶ蓮花。
辺りを見回してみても至る所で浮かんでいる灯火が、巨大な木々で覆われている村一面を、より一層幻想のものへと惹き立てている。
――こんな素敵な所だったんだ……。
ゆっくりと浮かんでいる灯火に魅入られている蓮花。
その横で鎧塚は「俺は馬車を中へ入れるから、此処にいろ。」と声を発し、再び村の外へと出ていった。
鎧塚の声掛けも耳に届いていない蓮花は一歩ずつ前へと歩みだし、一番近くで浮いている小さな灯火の前で立ち止まった。
――素敵な色合い……。
まるで暖かな何かに包まれているような感覚。
その灯火にそっと触れようとした蓮花。
すると突然、鎧塚ではない誰かの怒鳴り声にも近い叫びが聞こえた。
「だーれじゃ! そこにいるのは!」
思わず蓮花は、出しかけていた手を胸に引っ込める。
恐る恐る声のした方へ顔を向けると、足音が聞こえてきそうな程の勢いで近付いてくる一人の老人。
「そこで、何をしておる小娘」
早く家に帰らんか。
迫力こそ全くないが、蓮花の身長より明らかに低い老人が、顔を突き出して蓮花の顔を見上げて睨む。
「……あー、えっと……」
なんて説明をしたら良いのかが分からない蓮花。
口ごもっていると、蓮花を見上げていた老人がふと気が付く。
「……はて、お主……見ない顔じゃな」
そう言ってまじまじと蓮花を見つめる老人。
「見ない顔に可笑しな服……そして村へ入って来られたとなると……」
貴様、廃人じゃな?
下から睨むように老人は蓮花を威嚇すると、蓮花の言い分も聞かず勝手に一人で話し出した。
「まーた、世話を焼かなくちゃいけない廃人が来よった。あーあ! 不愉快、実に不愉快じゃ!」
蓮花に背を向け、後ろ手で自身の腰を叩いた老人はそう言うと、蓮花へ顔だけ向けてこう告げる。
「いいか! 何処で噂を聞いたのかは知らんが、はっきり言って、貴様ら廃人がこの村へ来るのは迷惑じゃ!」
段々とヒートアップしてしまったのか、いつの間にか身体も蓮花へ向き直り、指を突き刺して蓮花を脅そうとする老人。
「住居は与えてやる。ただし絶対に、夜は家から出るな! 村から出るなんて言語道断!」
盗賊に、この村の場所を知られたら、たまったもんじゃないわい!
文句を一通り言い終えたからなのか、老人は満足そうに勝ち誇った顔をする。
――……えーっと、どうしよう……。
あまりの捲し立てに、反論する事を忘れていた蓮花。
今更違うと説明しても、きっとまた面倒くさい事へなるだろうと、簡単に予想が出来た。
――それにまあ、廃人ではなくて正確にはウェキナ―だけど。でもこの人にとっては、地球人な事に変わりはなさそうだし……。
この老人への対応に蓮花が困っていると、やっと透明な膜の外から鎧塚が戻ってきた。
「……どうした」
蓮花と言うよりは、その前にいる老人へ向かって問いただす鎧塚。
その声に反応して顔を鎧塚へ向けた老人は、途端に青ざめる。
「なっ、なんじゃ……来ていたのか」
明らかに鎧塚を見て動揺している老人。
「ああ、妻へ荷物を届ける為に先程着いた」
上から見下ろすように、鎧塚は老人へと近付いていく。
「それより村長こそ、こんな夜中にどうかしたのか」
あえて目線の高さを合わせず、村長と呼ばれた老人の前へと立ちはだかった鎧塚。
途端に老人は思い出したかのように、声を大きくして話し出した。
「そうじゃ! まーた新たな廃人が紛れ込んでおったんじゃ!」
そやからこやつに、村の掟を教えておったんじゃい!
まるで鎧塚へ対抗するように、背の低い老人は大きく胸を張る。
その老人の言葉を確認するかのように、視線だけを蓮花へ向けた鎧塚。
目が合った蓮花は、思わず苦笑いをしてしまった。
「……こいつは、俺が連れてきたファイターだ」
鎧塚は静かに視線を戻すと、低い声でそう老人へ告げた。
「……へ?」
間抜けな声を上げた村長を余所に、鎧塚は言葉を続ける。
「こいつはただの客人だ」
ファイターだけどな。
そう告げた鎧塚に、慌てて訂正しようとした蓮花。
しかしそれを、目線だけで鎧塚は制する。
一方の老人は、瞬きを何回もして口を開いたまま鎧塚を見つめている。
すると、我に返ったかのような慌て振りで、こう話し出した。
「なっ! 何を言っておる! こやつは勝手に村へ入って来られたのじゃぞ! 加護の契約も交わしておらぬのに、どうやって村へ入って来られる!」
まるで言い訳をするかのように言葉を流した老人。
すると鎧塚は何とでもないように声を発した。
「契約の交わし方は、俺が教えた」
目を更に大きくしている老人へ向かって、次々と言葉を落としていく鎧塚。
「契約を交わす者の生き血を、看板へ結び付けてある布へ落とし『我契約に従い、加護に護られしこの村へ尽くす』と、唱えたらいいのだろう?」
呆気に取られている村長へ向かって「いつもあなたが言っているから、覚えている。」と鎧塚はとどめの言葉を刺した。
静かに睨みを利かせている鎧塚と、蓮花の顔を恐る恐る見比べた老人。
暫く沈黙が流れたが、老人はそれが真実だと感じたようで、大きく鼻を鳴らすと、何も言わずに蓮花へ背を向けた。
「村の中で問題を起こしたら、承知せんぞ」
最後に捨て台詞を吐いた老人は、言い終えると蓮花たちに振り返る事なく歩いていく。
その姿が見えなくなると、蓮花は鎧塚へ聞いてみた。
「どうして、村長さんを騙したんですか?」
――別に、地球人だからって蔑まされる事なら、大丈夫なんだけどな……。
そう考えた蓮花に向かって、こう答えた鎧塚。
「別に、騙した訳ではない」
敢えて言わなかっただけだ。
そう話す鎧塚は、更に言葉を続けた。
「後々の自分の為に、何でも正直に話さない方が良い時もある」
蓮花へ顔を向けた鎧塚。
「それに俺は、地球人ではないと否定していないし、騙してもいない。ただ『こいつは俺が連れてきたファイターだ。』と言っただけだ」
鎧塚の言い分を聞いた蓮花は、大きく頷いて納得してしまう。
――なるほど……、確かにそうだ。
そんな感心している蓮花を余所に「行くぞ。」と声を掛けた鎧塚は、歩き出す。
「えっ、何処へですか?」
思わず聞いてしまった蓮花。
すると、振り返った鎧塚がこう告げた。
「今夜はもう遅い、俺の家に泊まれ」
そう言うと、再び歩き出してしまった鎧塚。
びっくりした蓮花だったが、どんどんと鎧塚は歩いていってしまった為、慌ててその後を追うように走っていった。




