~決断~(2)
ブックマークを付けて下さった方がまた一人! ありがとうございます!
今日の夜に投稿する予定の分で、とりあえずあらすじに書いてある部分まで追い付きます。
そしたら明日から投稿する話は第二部になりますので、これからも引き続きよろしくお願いします。
「その、ファイターと呼ばれるものを選ばなかったら……私たちは着の身着のまま、放り出されるの?」
クラクの話を黙って聞いていた夏木が、そう聞いた。
「ああ、そうですね。その説明を忘れていました」
まるでわざと説明しなかったかのように、明らかに嫌そうな顔をしたクラク。
「一応、ファイターを選ばなかった場合に、ご案内出来る住居はありますよ」
そう言うと、クラクは簡単に説明を始めた。
「この闘技場は、やや街の外れに位置しているのです。割と大きな街なんですよ」
この闘技場のお蔭でね。
なんて付け加えたクラク。
「で、この街を西にずっと真っ直ぐ行くと、大きな森があるんです。その森の中に、ひっそりとある集落がございます」
その集落への移住を、お手伝いして差し上げます。
感情を無くした人形のように、無表情になったクラクは、更に説明を続ける。
「そこの集落は一応公にはしていませんが、地球人が何人か隠れ住んでおりますので」
ひっそりと生きていくには、申し分ないでしょう。
そう言い終えると、クラクは表情を戻した。
「一応ね、ワタクシが運営する闘技場の為に、皆様方をお連れしたのに、その様な放り出すなんて事は致しませんよ。どうぞご安心下さい」
張り付いた笑顔を見せたクラクは続ける。
「さあ、どういたしましょう? 我々と致しましてもこの不景気です。少しでも人件費を安く、尚且つ人気のファイターが、少しでも休めるよう多くのファイターを雇いたいのです!」
まるで、ファイターとして生きていくのが正しいとでも言うかのように、声を高らかにして話すクラク。
しかし、誰も声を上げる者はいない。
訳も分からず、気が付いたら知らない場所に連れて来られ、有無を言わさず死と隣り合わせな経験をさせられた蓮花たち。
その上更に、ファイターとして人殺しを稼業として生きていくか、それとも廃人として、理由もなく後ろ指を指されて生きていくかを選べと言われても、そう簡単に決められる訳がない。
他人任せではないのだが、誰もが決断する事を出来ないでいる。
すると、今度は進一が、ふと思い出したかのようにクラクに聞く。
「つーか、俺たちを元いた場所に戻してくれる……って選択肢はないんですか?」
その声にハッとする敦。
「そうだよ。俺らはもう、その催し物とやらは、無事に終わらせたんだろ? だったら戻してくれても、いいじゃないか!」
何でそんな簡単な事を忘れていたんだとでも言わんばかりに、張り切る敦。
「俺たちのお蔭で、今回のこの……殺し合いは、大盛況だったんだろう? だったらもう戻してくれても、いいよな?」
明らかに嬉しそうな敦の声。
しかしクラクは、そんな敦を馬鹿にしたような態度で、一括する。
「何を馬鹿な事を言っているのですか? そんな事はしませんよ」
憐れむような態度のまま、クラクは言う。
「言ったでしょう、我々この星の住人は、地球人が大っ嫌いだと。家畜同然の価値……いや、それ以下の価値もない貴方達なんかの為に、どうしてそこまでしてあげなくちゃいけないのですか。貴方達は、家畜の豚が『食べられたくない』と言ったら、人情で逃がしてあげるのですか? 利益を無くしても」
そんな事はしないでしょう、時間と経費の無駄です。
そう切り捨てたクラク。
「それに! 万が一この殺し合いを生き残った、貴方達地球人を全員戻していたら、どうなります? まず絶対、誰かはこの話を自慢材料にするでしょう?」
異世界に行って、殺し合いをさせられて、生き延びてきたんだぞと。
止めることが出来ないのか、クラクは自身の声を荒げている事にも気が付かず、尚も言葉を続ける。
「そんな事をされて、いつかこの星の存在が公認されるようにでもなってしまったら、どうなりますか? 我々の星に、確実に侵略してくるでしょう? 土地に政治に、暴力や金、ありとあらゆる手段を使って、この星を手に入れようとしてくる事は、目に見えて分かっております」
それが、貴方達地球人の性ですからね。
やや落ち着いたのか、声色を下げたクラクはゆっくりと敦を見る。
「ですからそんな、我々にとって不利益でしかない事を、わざわざする訳がない」
貴方も社長と呼ばれる役職だったのでしょう?
敦に顔を近付けて、クラクは語り掛ける。
「自分の経営している物の為に、利益となる物は使い、不要になったら破棄する。当たり前の事ですよ」
破棄する物に、経費など使いたくありません。
そう言ってのけたクラクは、改めて全体を見る。
「貴方達は、此処に連れて来られた瞬間から、人と同等の価値など無いのですよ」
止めの一言を放たれた皆に、もはや反論する言葉など思い付かない。
そんな敦たちをぐるりと見て、決断を迫るクラク。
「さあ、分かったでしょう? 自分の今の立場を! それでも蔑まされて、一生を生きていくのが嫌だったら、ファイターとしての道を与えます!」
選択肢は、初めからあってなかったかのような言い回しのクラクの言葉に、誰も言い返す者はいない。
そんな状況を、どこか他人行儀に見ていた蓮花。
誰もが口にしないまま、決まってしまった決断の行方。
それを覆すかのように蓮花はぽつりと、言葉を発した。
夜の投稿は、もしかしたら11時半過ぎぐらいになるかと思います。
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