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生きる為に。  作者: 井吹 雫
三章
13/175

~蜘蛛~

 昨日更新した『活動報告』にも記したのですが、第一章(2)と(3)を、少し文の手直しを致しましたので、報告です。

 それと、これも一緒に記したのですが、この小説の一ページ毎の文字数って、やはり少ないですかね?苦笑

 ちょっと悩んでいます。にゅーん


「大丈夫だ。そう、ゆっくりゆっくり」


 先に向こう側へ渡った水野が、そう言って今渡っている蓮花へと声を掛ける。

 先程渡る前に、もう一度だけ振り返って夏木を見た蓮花。

 しかし、目が合った夏木は静かに頷くだけだったので、しぶしぶ渡り始めたというところ。


――それより……、さっき水野さんが渡り切った直後に聞こえた音は、なんだったんだろう。


 水野大樹が渡り終えた直後、確かに何かが外れた音がした。

 上からでも後ろからでもない場所から聞こえたその音。

 蓮花はその音の元がなんだったのかが、気になっていた。


――よくよく考えると、あの音って私たちがいた真下から聞こえた気がするんだよね。それに、渡って気が付いたんだけど……。さっきから時々吹いている風、私たちがいた真下の方から向こう側へと吹いているんだよね。何かあるのかな?


 一度気になってしまうと、どうしても確かめたくなってしまう蓮花。

 ふと、風が止まったタイミングで振り向いてみようとしたが、その途端水野大樹に「振り返るな!」と言われてしまい、機会を失う。

 言われるままに再び進み始めた蓮花。

 それをを見て安堵した水野大樹が気にはなったが、今は渡り切る事だけを考えようと思い、真っ直ぐ前だけを見据える。

 ゆっくりと一歩ずつ、着実に前へと進んだ蓮花は、何とかそのまま渡り切る事が出来た。


「よかったっ、渡りきった……」


 思った以上に集中していたのか、地面に足が付いた途端そのまま膝をついた蓮花。

 水野大樹が「よく頑張ったね。」と言いながら、蓮花を立ち上がらせてくれる。

 そんな蓮花をすぐさま扉の中へと誘導する水野大樹だったが、蓮花は嬉しさのあまり、つい次の順番を待っているであろう宵歌と進一へと振り向いてしまう。


――……っ! 何、あれっっっっ!!!!


 蓮花の硬直具合に、視線の先を気付いた水野大樹が「見ちゃだめだ!」と、慌てて後ろから蓮花の目と口を塞ぐ。

 覆われたことにより、どうにか叫び声を上げる事は逃れたが、それでも蓮花の目の中にはしっかりと、ある者が刻まれてしまった。


――怖いっ! あんなのがずっと真下にいたの? さっきから吹いていたあの風は、あいつだったのっっ?


 振り返った向こうの真下には、大きく、人一人なら簡単に飲み込んでしまいそうな巨大な蜘蛛(クモ)が、こちらを捕えるかのように待っていた。

 黒く、紫がかった身体に大きな赤目。

 とてもではないが、蓮花が生きてきた中で一度も、こんな姿をした生き物に出会した事はない。

 ましてやこんな巨大な姿をした蜘蛛を、今まで一度だって見た事がない。

 あまりの恐怖に水野大樹にしがみ付く蓮花だったが、安心させるかのように水野大樹がこう言った。


「大丈夫だ、あいつはまだ動けない」


 何故そんな事が分かるのかと疑問を持つ蓮花に、続けて水野大樹は説明する。


「あいつの足と胴体には、鎖が繋がれているだろう? あれがある限りは大丈夫だ」


 続け様に「それに、あいつの前にはガラスがあるみたいだからね。」と言った水野大樹。

 恐る恐る蓮花はもう一度見てみると、確かにあいつが時折吐いている糸のような物は、すごい勢いで奴の目の前の透明な何かにぶつかり、こちらへ飛んで来る事はなかった。


「きっとどこかに、呼吸用の穴があるんだろう」


 だからたまに風だけ吹き上がってきていたんだよ。と説明してくれた水野大樹。

 しかしここで、先程の音を思い出した蓮花。


――さっき聞こえた何かが外れる音って、あれだったんじゃ!


 そう思い再び奴をよく見た蓮花。

 すると周辺に、外れた足枷と、それに繋がっていたであろう鎖が、確かに二つ落ちていた。


「水野さん! あの鎖、段々外れていってますよ!」


 慌てて先程、何かが外れた音がした事を水野大樹に説明する蓮花。

 だが水野大樹は「知っている。」と、落ち着いて答えた。


「さっき俺が渡り終えた時も、その音は聞こえた。君が渡り終えた時に鎖が外れた時も、同じ音がした。」


 きっと誰かがこちら側に渡り終えると同時に、足枷が一つ外されていくのだろう。

 そう説明した水野大樹の話を聞いて、真っ青になる蓮花。

 既に外された足枷は二つ。

 渡り終えている人数も二人。

 だがしかし、まだ繋がれている鎖は足に三つと、胴体の大きな物が一つ。

 そして、向こう側でまだ渡っていない人数も四人。

 つまり、最後の一人が渡り終えた瞬間にすべての鎖は外れ、奴が解き放たれるという事になる。

 今はまだガラスがあるから大丈夫ではあるが、そのガラスも奴が吐く糸が当たる度に、どんどんと脆くなっていく。


――もし鎖が全部外れたあいつが、ガラスに体当たりなんてしたら……一瞬であいつは、自由になる。いや、むしろ皆が渡り切る前に、吐く糸でガラスが割れてしまったら……。


 蓮花は最悪の事態だけは絶対に避けたいと思い、水野大樹と一緒に、次を渡り始めていた進一のサポートをする事にした。




 今日も夕方と夜に、更新したいと思います!

 ……もし夕方に更新できなかったら、申し訳ありません。汗

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