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生きる為に。  作者: 井吹 雫
三章
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~弁解~

 今日も、夜に一ページ更新する予定です!


「そういえば、どうして鉄の球に追われていたんですか?」


 水を飲み終え、再び歩き始めた皆の中から、一番聞きやすい宵歌に話し掛けた蓮花。

 確かに蓮花は先程一本道を確認しに行く際、皆にそこで待っていてとお願いした筈。

 なんとなく想像は出来ていたが、一応確認しておきたかった。


「あー、えっと……ね」


 言葉を濁らせた宵歌は一度口を閉じたが、すぐに教えてくれた。


「蓮花ちゃんが走っていった後、すぐに進一君が『俺たちも行きましょうよ!』って、飛び出しちゃって」


 気まずそうに、そう答える宵歌。


――あぁ、やっぱり……そういう事か。


 先程の飲み物の件があったからか、怒りこそは出てこなかったが思わず苦笑いしてしまう蓮花。


「それで慌てて私と大樹さんが、危ないからって呼び戻そうとしたんだけど……」


 一呼吸置いて宵歌は言いづらそうに、一気に説明してくれた。


「進一君が立ち止まって、振り返っても特に何も起こらなかったの。だから私たちも安心しちゃって」


 その話を聞いて、蓮花は納得する。


――なるほどね。でも、進一君の一人だけなら球は出てこない筈なのに……。私の考えが間違っていたのかな?


 自問自答を始める蓮花。

 すると、そんな蓮花の疑問に答えるかのように、宵歌は話を続けた。


「それで敦さんが『大丈夫そうだし、行くか。』って道に足を入れて歩き始めた瞬間、何かが外れる変な音がして……」


 そしたら私たちが入ってきた扉の上が開いて、あの鉄の球が降ってきたのと教えてくれた宵歌。

 すると、その横を歩いていた夏木が口を開いた。


「それより、何であんたはあの時危ないって分かったの?」


 球が出てきた場所は、蓮花が確認をしに飛び出した後の皆の行動によって開いた為、蓮花が分かる訳がない。

 しかし蓮花は、確かに皆で行ったら危ないと言った。


「こうなるって分かっていたの?」


 更に問う夏木。

 この問いにより、少なくとも夏木にとっては蓮花自身も疑われるような行動を取っていたんだと気が付いた蓮花は、慌てて弁解をする。


「違うんです! ただ、あの時はまだ確証が持てなくて!」


 実は蓮花は、あの時人の形をした絵の意味が分かっていた。

 二つ描かれていたその絵。

 一人の絵は何事もなく歩いていたのに、数人が倒れている方は、塗りつぶされた円に押し潰されていた。

 でもこの塗りつぶされていた円、実は一本道を表していた二本の線のところにも同じ物が描かれていたのである。

 その、塗りつぶされていた二つの円が同じ物を示していると蓮花の頭の中で繋がった時、一気に謎が説けた。

 どのような原理であったのかは分からないが、先程の道は一人なら問題なく歩く事が出来る。

 だが何人かで一緒に歩いてしまうと、その塗りつぶされている円……つまり巨大な球が後ろからやってきて、歩いている人達を押し潰してしまう……そういった道だとあの絵は示していたのだ。

 だから蓮花は皆で歩く事を止め、一人で確認をしに行った。

 確かに、皆が解けていない謎を一人だけ分かった事が嬉しかった蓮花。

 あの、蓮花たちが普段目にしている文明とは違う退化の技術に気を大きくしていた蓮花は、このまま正しい道さえも蓮花が示せたら、きっと皆に驚かれる。

 あわよくば蓮花を見下している敦を負かすことが出来る。

 そんな浅はかな考えが、どこかに浮かんでしまっていたのかもしれない。


――私の甘さが、皆を危険にさせたんだ。


 自分のせいで、今回の危機を生んでしまったと後悔する蓮花。

 例え進一が忠告を守っていてくれていたとしても、敦が一歩踏み出さなかったらとしても。

 それでも自分の甘さが、結局皆を危険に晒してしまった事には変わりはない。


「確かに、私の甘さが原因で、皆さんを危険に晒してしまいましたよね。本当にごめんなさい」


 自分のいけなかった部分をきちんと認め、素直に謝罪をする蓮花。


「蓮花ちゃんのせいじゃないよ、私たちも安易に考えていたから」


 そう言って、蓮花をなだめる宵歌。


「そうね、次からは気を付けて。勝手に自己完結しないで、気が付いたことはなるべくすぐに言って。」


 皆命を懸けているのだからと言いつつ、蓮花の謝罪を受け止めてくれた夏木。

 そんな二人の、どちらも蓮花の為を想ってくれての違った優しさに、決意を改める蓮花。


「おーい!」


 進一が手を振っている。

 何かを発見したのであろう、先を歩いていた男性たちが手招きしているのが見えた蓮花は、二人と一緒に歩いている足の速度を上げた。




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