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W@TCH THE WORLD  作者: 飴々乃 ほまる
W@TCH MY WORLD
8/11

GO @HEAD FOR THE FUTURE

戦う。見つけ、選び、示し、変えるために。

100年以上も前に太平洋上に巨大な発電プラント型ギガフロートの建設プロジェクトがあったらしい。ワイヤーと鉄のフレームで支えられた人工島では太陽光、太陽熱、波力、風力などによる大規模な発電プラントが多くの周辺国にエネルギーを供給し、人類の生活を支えていたという。しかし、半世紀前に起こった宗教テロにより、プラントモジュールと人工島は崩壊し、周辺国では多くの人々が餓え、死に、深刻なエネルギー問題を引き起こした。それが後の人類史に名を残す最大のエネルギーテロ『楽園消失(パラダイスロスト)』である。その後、シベリアで始まった奴らの侵攻にあたり、15年前に再び太平洋上にギガフロートが建設された。メガソーラーによる電力の供給と西欧連合の新設拠点として島はその大きさを増していった。12年前に西欧連合はその政治機能の一部を移設し、軍事機能の全てを総司令部として完全移設した。

現在、かつて電力を供給していた周辺国家の6割が《LIFE-LESS》の侵攻により崩壊、占領されている。ギガフロート自体が大陸と周辺の島々と距離を取っているため、長距離の海上航行能力を持たない奴らが侵入してくることもない。故にそこは人類最後の砦であり、地球上で最も安全な楽園であるという意味を込めて、『ラストエデン』と呼ばれている。正式名称はアヴァロン級戦略拠点洋上都市艦『レヴァイアサン』。最大直径100Km、人口1200万人を抱える楽園は各地での戦闘や作戦に際し、柔軟に対応できるよう、多くの軍事設備を備えている。

そんな中でも私が今いるのは、西欧連合軍が誇る最大の空母アトランティアだ。全長5.2Km、搭載数1500オーバー、最大速度35.1ktの規格外のスケールを持つ超巨大戦略級空母である。今は甲板の、正確には滑走路の傍の《star-carrier》に大型の推進装備への換装作業と最終チェックをしているところだ。


「これは、恥ずかしい…」


私はプロフェッサーの用意した新パッケージの戦闘用スーツに着替えた。白を基調としたスーツには腰、背、脚にそれぞれ小型のスラスターが付いている。体のラインに沿って密着したスーツには所々入ったに赤いラインが少し目立つが、おそらくプロフェッサーの趣味だろう。あの人はそういう人だ。目標地点への到達までは激しい気圧の変化に見舞われるため、酸素マスクを内蔵したヘルメットが用意されていた。どうやら通信設備も内蔵しているらしく、用意していたインカムは無用になった。

ポールマン伍長は操縦席でメカニックとの最終チェックをしている。作戦開始の予定時刻が近づいている。作戦開始と同時に南雲大佐の率いる機巧士団とサイト、イアンが本土に上陸し、残った全部隊で後方からの火力支援を行うことになっている。

ヘルメットに通信が入る。


『カレハ、銃の追加モジュールの展開にはタイムラグがあるから、事前に展開状態を維持して突入して』


「了解です、メイヤー」


『気をつけてね』


通信を切って手元の銃を見る。白亜のボディに純白の環状アタッチメントが取り付けられている。真新しいそれの金属的な輝きがベースの銃によくマッチしている。

ポールマン伍長が出てきた。


「カレハ嬢、準備ができました。…なんだか綺麗になりましたね、大人になったていうか。目のやり場に困ります」


「ドアを開けるときはノックぐらいしてください、更衣中だったらどうするんですか。あと、今のはセクハラですか」


「まさか、綺麗だと言ったんですよ。まあ、着替え中だったら役得というか眼福ですね」


「……」


この男は思ったことが漏れすぎだと思う。


「そろそろ時間です」


了解、と返事をすると操縦席に戻っていった。


『こちら《star-carrier》、ブリッジへ、発進許可を』


『《star-carrier》へ。発進を許可。頼んだぞ』


フォガロ=メリクス艦長の低い声が聞こえる。


『電磁カタパルトと正常。機体及びマスドライバーのシステム異常なし(オールグリーン)』


『カウント開始』


ブースターの点火音が聞こえる。


『3』


『2』


『1』


発進。

凄まじいGが身体にのしかかる。


『本機は只今より、弾道飛行で目標ポイントB-2へ向かいます。』


離陸した機体はおよそ2分半で高度30000mに到達し、その後機体ごと25000mまで降下したのち、私はダイブする。


「もう、サイトたちは戦ってる。…私も戦わなくちゃ、人類にとって未来があることを、希望があることを示さなきゃ」


(カレハ、一緒に戦って。自分の道は自分で決めることにした、私と一緒に歩いてくれる?)


(…うん。あなたが、いえ、私が決めたんでしょう?選ばない選択なんてないし、何よりも自分のことを知りたいしね。3年間も文字通り自分探しの旅に出てたんだから)


区切りはついた。私は耐圧ガラスの外を見た。地平線からは日が昇り始めてる。


「私は闘う。見つけるために。選ぶために。示すために。変えるために」


現在、沖縄上空27000m。戦場は近い。





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