THE RESIST@NCE OPERATION
ー未知の敵と人類の反抗作戦。覚悟と可能性が導く明日に希望を作るために。
オペレーションルームには今回の作戦に参加する全員が集められた。西欧連合の南雲と機巧機士団のメンバー、サイトをはじめとする《liberty》の面々、ジブラルタルとの衛星通信で会議の参加するフェイ。
スクリーンに投影された三次元プロジェクターによる現在の沖縄の勢力図を囲み、山本佐官が話を進めていく。
「衛星軌道上の西欧連合所有衛星《Watch-dog》による超長距離レーザースキャンでは1時間前の沖縄には計247機の《LIFE-LESS》が確認されています」
247機…その数を聞いて一瞬言葉を失うがすぐに息を呑んだ。
「うち245機が《type-animal》、2機が《type-vajura》、1機が《type-castle》、残り1機は《type-unknown》と判定されいます」
少し気にかかるところがあった。
「ここまでで質問は?」
手が上がる。南雲大佐だ。
「質問だ。最後の《type-unknown》というのは既存の外敵ではない可能性があるということか?」
「はい。この機体…いえ、個体は《type-castle》の占領している首里城に観測されており、2機の《type-vajura》よりも高位に当たる新型だと推測されます」
「《type-vajura》よりも高位の個体だと…?」
そこまで話したところで横槍が入った。
「ちょっと待って、山本佐官。あなたのその分析では敵に統率された…蟻のようなソーシャルカーストが存在するように聞こえるのだけれど」
フェルの指摘はこの場にいる全員に動揺をもたらした。なにせ、この19年ただ圧倒的な力による侵略を続けてきたヤツらが統率された軍隊のようなシステムを持つというのが事実であるなら、これまで以上に劣勢を強いられることとなるには火を見るより明らかだからだ。
「私の個人的主観に基づく推測では敵の戦力配置には作為的な面が多く見受けられます」
そう言って手元のデバイスを操作すると、先ほどのマップに赤いドットが落とされた。海岸線を囲むように並び、内陸に行くほどドットの密度が過疎化している。
「この地点、首里城に先ほどの《type-castle》及び《type-unknown》が陣を構え、そこを基点に輪形に敵が配置されています。我々が各基地に多層の防衛線を構築するのと同様に敵も防衛線を展開し、周囲の防御を行っているようです」
信じがたい話だが、このマップを見る限りそれは現実のものとなっている。
「相手が戦略的陣形を張っている以上、正面から突入しても長期戦となり、結果消耗した我らに被害が増大することになります」
「しかし、それでは攻略法など…」
サイトが目を細めて、マップを睨む。
「ある」
そう口にしたのはフェルだ。
「この陣形が事実であるなら、取れる戦術は存在する」
モニター越しではあるが、彼女の声は確信をもってそう告げた。
「空から直接指揮を出している個体を撃破して、陣形が乱れたところを海上と陸上戦で殲滅する」
「しかし、降下作戦じゃあ的になるだけじゃないのか?」
「そこはカレハが新パッケージを装備して《Code-K@REHA》を全面に展開しながら降下するのが確実だと思う」
プロフェッサーが用意した新パッケージは小型の飛行ユニットを搭載した戦闘服と銃の拡張パーツ。《liberty》の演算コンピューター《accessory》の算出によって作られたそれは現状の戦力を1.2倍まで強化出来るものだった。
「だが、目的地上空にたどり着く前に迎撃されてしまう可能性だってあるぞ」
前回、西欧連合軍がエルサレムで迎撃された時は高度10000mでも当てられている。生半可な高度では同じ轍を踏みかねない。
「だからカレハにはポールマン伍長の新型輸送機《star-carrier》で目的地上空高度30000m、成層圏まで弾道飛行し、25000mのポイントで降下を開始してもらう」
絶句だった。銃一丁と小型の飛行ユニット付きの戦闘服で高度25000mに放り出されるなど想像が追いつかない。
「ポールマン伍長、出来るか?」
「はい、確実に」
ポールマンは自信をもって答えている。
「さて、カレハ、ここまで聞いてあなたは実行出来る?」
答えは決まっている。取り戻すと決めたのだ。奪い返すと決めたのだ。だから臆病になっている時間なんてない。
「うん…じゃなかった、はい」
「大丈夫そうね」
握った手に力が入る。いよいよ始まる。人類と《LIFE-LESS》の歴史において、初めての反抗作戦が。
第6話ですね。よろしくお願いします。