THE F@RTHEST KNIGHT
ー極東の剣士は笑う
「南雲大佐、《liberty》のカレハ特尉より御電話です」
部下の山本佐官の呼びかけで書類の山から顔を上げた男は相手の名前を聞くと、黙って内線ボタンに手を掛けた。
「代わりました、南雲です。お久しぶりですね、カレハ特尉」
最後に会ったのは2年前のことだったか。真っ白な髪で紅い瞳をした少女の顔を思い出す。
「今回はどんなご用件で?」
前回、彼女が呉に来たのは《liberty》の船艇の補給のためだったが、今回はどんな用件での再会となるのだろうか。彼女が直接私に連絡を取って来たのは今回が初めてのこと。よほど急な案件でもあるのだろう。
「…はい。…え……」
耳を疑った。彼女の口から出た台詞はこの地位に就て以来初めて聞く台詞だった。この19年間、人類が諦めの色を濃くし、後手にまわり続けたこの戦況に風穴を開ける一言だった。
「……ほう…」
人類の切り札たる彼女が取り戻すと言う地の名前を聞いて、デバイスを持つ手に力が入る。
「沖縄ですか…」
沖縄。6年前に出現した《LIFE-LESS》によって基地を自爆放棄し、以来ヤツらに占拠されている日本の国土。現在、屋久島まで前線は後退している。
「…了解しました。3時間後に天草の基地に」
デバイスを置くと椅子にかかっている上着をしっかりと着込み、山本に指示を出す。
「今すぐに天草に連絡を。奪還作戦を始める」
「了解しました」
南雲は立て掛けてあった刀とアタッシュケースを持つと《flight-carrier》に向かった。
《search-phone》でオペレーションルームに連絡を取る。
「こちら南雲大佐。西欧連合軍-極東第一機巧機士団全メンバーにへ通達。……《Resistance-operation》の発動を要請する」
極東の剣士は高鳴る鼓動を胸に、そう言って通信を切った。
第4話です。今回はカレハ以外の視点からの物語が欲しかったので南雲大佐の視点で書きました。
レビュー、アドバイス等々よろしくお願いします。