VICTIM OF THE CIVIL W@R
ー反逆の前に見つめるのは内乱の狼煙
マーガレット少尉をエジプトに届けてから35時間がたった。イスラエルでの戦闘を《liberty》に報告して、私はエジプトを離れることにした。
ジブラルタルに《liberty》からフェルが来ているとの報告が上がったからだ。フェルは組織のメンバーの一人で、《liberty》の戦術構成士官をやっている少女だ。5年前のオーストラリアであった連合軍豪州本部での防衛戦『災禍のクリスマス』において、人類史で初めて《LIFE-LESS》に対して既存の火力兵装の有効性を証明したことが彼女の功績の一つに挙げられる。それまでは既存兵器では外敵の戦力を駆逐するには足ることがないと言われ、その時点で既に南アフリカとシベリアの半分以上が失われていたという。
現在、《liberty》の持つ最大の頭脳であり、《Designs》の一人である彼女はジブラルタルで行われる会議に出席するためスペインに来ているのだという。
ジブラルタルはイギリス領にある軍事都市でジブラルタル海峡に面する戦略拠点基地。先日コスタリカの拠点基地を失い、また領域を失ったため、新たな防衛線の設置が進められるのだろう。
リビアの沿岸地域を走っていたが、ふと内陸の方を見ると遠くに黒煙が立ち上っている。この辺りは近年治安の悪化が進んでいる地域だ。西欧連合が《LIFE-LESS》との戦争に突入して以降、経済支援が行きと届かなくなり、民族間での内乱が続いている。略奪、殺人、暴力によるテロの連鎖がこの地域を埋め尽くしている。
1世紀くらい前にもこの辺りでは軍事国家を打倒しようという動きによって多くの人が暴力による嵐を経験している。PMCや武器商人によって戦火の火種は広がっていき、西欧連合も手出しが出来ない状況にある。
「あれは、《auto-fortress》か…この辺りだとアメリカのPMCか…」
ひと昔前の戦車とは違って対象によって自動で兵装を交換し、最速で状況を制圧するための兵器は外敵を相手にするためのものではなく、対人用の兵器である。《LIFE-LESS》が現れてもなお、世界では内戦を続けている地域がある。
遠くで泣き叫ぶ声が聞こえる。
内戦の犠牲のなるのは子どもや女性だ。ずいぶん前のことだがメイヤーが言っていたことがある。「内戦が長く続くことで儲かる立場の人や、戦場で戦うことを仕事にしてる人だっているから…」と。
それは多分事実だし、そうやって自分も生きてる。
でも、それは正しいことじゃない、きっと。最善の選択じゃない。ヤツらと戦うために人間同士が殺しあってるのは間違ってる。
マーガレット少尉が言っていたように、私が前線で戦い続ければ一時的には時間を稼ぐことは多分できる。
けれど、それは長期的な視野に立った時に人類がヤツらに対抗できるようにするためには決していいとは言えない。
ふと、こんな時にフェルならなんて言うかと考える。
「きっと、簡単に答えを出すのかな…」
私は答えを出せない、まだ。
私は結局ジブラルタルへ行くのをやめにすることにした。
今、フェルに会って答えを聞いてしまうと自分で答えを見つけられなくなりそうだから。
私はエジプトに戻って、日本の呉にいるであろう南雲大佐に会うとこにした。
ヤツらに取られた沖縄を取り戻すために。人類の反攻作戦を始めるために。
「いつまでも、守りに入ってたんじゃいつまでたっても終わらない」
ポケットから《search-phone》を取り出して、目的の名前までスクロールして、コールを押す。
「もしもし、ポールマン伍長ですか?カレハです。今リビアにいるんですけど……」
コスタリカで出逢った彼に連絡を取って日本まで同行してもらうことにしよう。
リビアの空は高い。
第3話です。文章の書き方が下手なので心配です。感想、アドバイス等々よろしくお願いします。