ご近所防衛隊09 くまのぬいぐるみ
無い。どこにもない。
「お母さん! ふーちゃんどこやったの!」
学校から帰ると、
フロシアンテことふーちゃんは、ちっちゃな頃からずっと一緒のくまのぬいぐるみ。もう、ボロボロになっては居たが、大切な友達だった。部屋中をひっくり返してみたが行方不明。
「えー!」
はたと思いつき、急いで外へ出る。角を回って通りに出ると、
「オーライ。オーライ」
見慣れたゴミ回収車では無いけれど、軽トラックに袋を放り込んでいる。宙を舞う袋の中に、ぬいぐるみのような物が入って居るのが見えた。そして無情にも車は立ち去った。
「そんなぁー」
呆然と立ちつくす少女。
そこへ
「ひーちゃん。どうしたの?」
「あ、しんちゃん」
泣きそうな声で女の子は言った。
その頃、郊外の廃品回収業者の倉庫。
「いったい、このゴミの山どうするんです?」
手伝いに来ていたジョーカーの女性が呆れた。
「新しい発明のパーツ取りです」
白衣のハム博士。最近殆ど塾の先生でしか出てこないが、どこの秘密基地にも属さない基地外博士でも有名である。時々、とんでもない発明で世間をお騒がせしている。
「このガラクタがですか?」
「馬鹿にしては不可ませんよ。下手な新品は初期不良と言って、てんで使えないことがあります。その点、既に稼働実績のある物は……」
「いえ。判りました」
また長くなりそうだと話を遮る。
「で、何を創っているのですか?」
ハムは髪を掻き上げ。
「九十九神って言うのは知っていますか?」
「はい。昔本で読みましたが、古くなった物が魂を持って妖怪になるってやつですね」
「良く本を読むんだね。本が好きな子は賢い」
「……ハム先生。ここは塾じゃありませんよ」
照れ隠しに笑うハム博士。
「後少しで完成するが、これは九十九神製造器。長年使われてきた物ほど、強いモンスターになるんです」
「それで部品取りに使えないゴミまで回収してるんですか?」
ジョーカーの女性は眉につばを着けてみた。
「九十九神となった『物』は、巨大化して動物程度の擬似的な知性を持つ筈です。実験最中にジャスティスに邪魔されないように宜しく警護お願いします」
ハム博士は自信満々に言い切った。
5日後の夕方。某少女司令のお部屋。
「おねえちゃーん」
「しんちゃん。その子は?」
可愛い少女司令は、新顔を連れてきたしんちゃんにあたふたしながらも話を聞く。
「ふーちゃんが居なくなったの」
「ふーちゃんって……」
誘拐という言葉が脳裏に浮かぶ。
「くまのぬいぐるみだよ」
心配する司令の勘違いを訂正するしんちゃん。ほっとしながらも、大切な友達であることを知り、我が事のように悩む。
その時、rPhoneが鳴った。
「はい。……え?」
連絡を受け、慌てて回線を繋ぐ。モニターに再生されるAI・ケイの声が部屋に響いた。
「昨夜辺りから、動き回る古い鍋や、人形の怪物が知立で目撃されています。どうやらジョーカーの仕業のようなので、調査をお願いします」
映し出される映像を見て、
「あ! ふーちゃん」
小さな女の子は、巨大なくまのぬいぐるみの怪物を見て、そう叫んだ。
●九十九神マシーン
見た目には、廃品回収業者の倉庫にしか見えない、ハム博士の研究所。見た目にもカオスな作りのマシンが一台。這い回るリード線の多さと奇怪なパーツの組み合わせはいっそ清々しいくらい。
その回りに屯するジョーカー達。
「ハム博士。これが九十九神化された人形ですか?」
Lily-Bellはぽうっとする程可愛い鳥のぬいぐるみを、思わず抱きしめた。
「なにすんだよ!」
ぬいぐるみがしゃべる。どうやら知性を持っているらしい。
「たいしたもんだべ。実験は上手くいっただがや?」
キャプテンBは感心する。
「だーかーらー! 俺は狂鳥ぴーちゃんだってば」
およそ、ジョーカーと言うには相応しくない、可愛すぎるフォルム。顔を見合わせるリリィとB。
「ところで博士」
ぴーちゃんは話題を変えた。
「このマシンで創る九十九神って、一人とかじゃなく長年使われてきたものだとうんと強いのかな。それと扱いが悪い場合はどうなるの?」
道端に棄てられた人形が怨念を持って……。となればちょっとしたホラーである。
「性能の程はどうなのです」
重ねてリリィが聞くと
「まだ実証はしてませんが、九十九神メーカーは同時操作可能です。また個々のパワーは『愛着を持たれた時間』によって変動する筈です」
自信を持って言い切るが、Bは傍らにある参考資料とおぼしき本を見て脱力した。
(「あの、陰陽師ってまじだすか?」)
「じゃあ、これお願い」
ぴーちゃんが取り出したのは、自分そっくりの小さなぬいぐるみ多数。
「ああ。いいとも」
二つ返事でマシンをセット。のんのんと振動を立て、メーターが回り発光ダイオードが点滅する。ぬいぐるみは火花を散らし燃え上がった。そして、銅の粉末に熱硝酸を注いだような濛々たる煙。それが収まると、その灰の中から、
「みぃー。みぃー」
巨大化するどころか正反対。ミニミニサイズのぴーちゃん達。
「縮んだ……でも、可愛いかも」
リリィが掌を向けると、ちょこんと乗っかる。手乗りぴーちゃんだ。
「あれ、あんまり強くない? 買ってきて30分だけど愛着あるのになぁ?」
「そりゃ、動いてるだけ奇跡だべ。ハム博士」
Bはならば大丈夫だろうと、自分の刀剣コレクションから、秘蔵の品ノブシザンバーを取り出す。
小一時間後、生まれた九十九神は小太刀サイズ。切っ先は丸く威力はなさそう。
「浮かんでるだ。動いてるだ。いや~大したもんだべ」
予想とは違っていたが、生き物のように自分で動く。
「次はリリィさん。あなたの番ですよ」
ハムに促されて古ぼけた怪獣人形。
「年代物ですね。昭和40年代始めと言うところでしょうか?」
ハムは一つを取り出して処置を行う。
と、見る間に怪獣は膨れ上がり、ぴーちゃんの頭がちょうど怪獣の顎の当たりくらいになるサイズにまで大きくなった。ハムスターの歯・斑模様の狸の身体・まん丸大きな可愛い目。頭には鶏冠のような冠がある。
「こんにちはリリィちゃん」
人語を話した。
「あ、あなた……」
予想以上の効果に、リリィは絶句。
「お腹がすいたー。美味しいラーメンが食べたい」
「ラーメンなら知立にも美味い店があるべ」
面白がったBがひょいと千円札を握らせ耳打ちした。
「おじさん。千円じゃ足りないよ」
Bはもう一枚握らせる。
怪獣は
「バラサ、バラサ」
と歓喜の声を上げると、びゅんと飛んで倉庫の天窓から飛び出した。
●一杯の飲み物
土管下の秘密基地。
シークレットブーツ。タイトスカート。トレンチコート。姿見を前にR・L・ジーンは苦悶。
「はぁ~」
深いため息。たまには大人らしい装いをとチャレンジしてみたが、てんで駄目。
檻の中の熊のように、さっきから入ったり来たりを繰り返しているのは漆原祐。顔に手を当てて、机の前で考え込んでいるのは藤堂緋色。いつものシャングリラに似つかわしくない深刻な空気。
「みんな落ち着いて」
苛立ちを隠せない緋色と祐、そしてジーンに
「はい」
漆原静流は暖かな飲み物を用意する。緋色にはマシュマロを浮かべたココア。
「おいしい」
ふわふわとしたマシュマロが半ば溶け、クリーミーな泡に為って行く感触。緋色はほっと息を吐いた。
「姉貴、サンキュ」
祐にはエスプレッソにチェイサーの固形蜂蜜添え。苦味が舌を敏感にさせ、含んだエスプレッソに微かな甘みを感じる辺りに、蜂蜜を食む。なかなかの癒し効果だ。
「すまない」
ジーンには生ショウガを卸して黒砂糖とブランデーを加えて湯で溶いた大人の飲み物だ。ちょっと強めのショウガの香りと辛味が身体を暖め。薫り高いブランデーが染み入るように身体の芯に点火する。
「恐らく、ここいらであんな非常識な真似ができるのはハム博士よね。どの程度の効力があるか判らないけど、早く手を打たないと事態は悪化するわよ」
「姉貴。どのくらい掛かる?」
「あの怪物達は物体が何らかのエネルギーによって擬似的な命を与えられたものだわ。それを中和する方法を今、探してしているの。現状、未定としか言えないわね」
「うーん」
祐は判らないと言う答えに困ってしまう。
「ヒロちゃん」
「はい」
「手伝ってくれる?」
研究開発にはそれなりに時間が掛かるのだ。
「では、私たちは先に」
「そうだな。先ずは暴れているふーちゃんをなんとかしなくちゃ」
ジーンは『物の怪アンテナ』の製作を待って待機することになり、祐が先発する。
「頑張りなさい。あんたはあの子達の『ヒーロー』なんだから」
静流の激励に祐はピッと親指を立てた。
●ラーメン店襲撃
午後6時。愛知県知立市は中山町の浄水場を右に見て、国道1号線沿いに東へ向かう着ぐるみサイズのユーモラスな怪獣。通行人が立ち止まり何事かと眺めている。
「えーと。ここらへんだね。あのーおじさん。この近くにひろさんラーメンってお店知りませんかぁ?」
呼び止められた通行人は、さっと辺りを見渡すが、カメラさんも照明さんも居ない。
「だったら山町小林22-6だから、ここを真っ直ぐ行って左だよ」
「ありがとう。おじさ~ん」
礼を言うと歩いて行く。最初数名だった野次馬が、次第に数を増やし、店に入る頃には30人以上になった。
「おじさん。ここ、愛知で一番美味しいラーメンなんでしょ? ラーメンちょうだい」
千円札を二枚出すと、
(「ははん。TVのハプニング企画だな。こりゃ有り難い」)
事前連絡を受けていないが、只で宣伝とあって営業スマイル。店長は威勢良く。
「ラーメン一丁!」
手早く麺が茹でられ、熱々のラーメンが運ばれる。箸を取るが早いか、江戸っ子が蕎麦をたぐるように、ツルツルツルっと口の中に吸い込まれて行く。そしてスープまで飲み干した。
「おじさんお代わりぃ!」
二杯目もペースは変わらない。
「美味しい美味しい、美味しいよバラサのサ。いくらでも食べれるよ」
(「嬉しいこと言ってくれるね。しかし、どんな仕掛でやってるんだろ」)
店長はほくほくの笑顔でお代わりを用意して行く。
12杯を数える頃には、本当にやって来たTV局。野次馬の何人かも店に入ってラーメンを注文。積み上げられるどんぶりは、もう山のように為っていた。
食べも食べたり30杯。
「おじさーん。とてもとっても美味しかったよぉ。ここのお店は愛知で一番じゃなくって日本一だよ。おじさんお勘定~」
「あ、お代は良いですよ」
普段から繁盛している店だが、思いがけずTV局と団体さんの襲来だ。50の席は相席でも満員。カウンターも埋まり店の前には長蛇の列。まるで開店セールみたいな大繁盛。唯一困ったことは、開店早々仕込んだスープが無くなって、普段ならば深夜4時までやっている店を、8時を待たずに閉めなければ為らないくらい。
その頃。家族とTVを見ていた緋色は
「うーん。お店繁盛させてるけど、これもなんとかしたほうがいいかなぁ?」
複雑な思いで呟いた。
●頼もしき敵
高さ10mの巨大なぬいぐるみ。ほぼ電柱と同じ背の高さだ。
なんとか無事に取り戻そうとしているジャスティス達にとって幸いなことに、夜毎に世間をお騒がせしている他は、今のところ実害はない。
「迫力だな」
K=9に変身済みの祐は、シルバーブリッツで目の前を通過する。くいっと顔がこちらを向いた。
「よし、時間稼ぎだ」
幼児の遊び相手をするように、挑発しぎりぎり回避。何度かに一度は、わざと捕まえようとする手に接触して、あたかもそれで吹っ飛んだ形を取って距離を開く。
「なんだか、ちっちゃな子みたいだ」
心中K=9は安堵した。巨大化しても自分で動き回っても、ふーちゃんはまだ、ひーちゃんの友達のままだと。
(「何としてでも時間を稼がなきゃ。ヒロ、姉貴……急いでくれ」)
邪気は無くとも、まともにふーちゃんの一撃を食らえばやばそうに思えた。
「そこの狼男!」
現れたのはキャプテンB。
「お、俺のことか?」
ふーちゃんの制空権から離れて、言葉を返す。さんざん犬とか言われるK=9であるが、本来のモチーフは狼である。思わず顔が緩む。
「先ずはスゲボー勝負だす」
ライディングランスを構え突進してくる。K=9の得物は電磁ヌンチャク。武器では不利だが、
「頼むぞシルバーブリッツ!」
風となる二人の影が交叉する。乗り物の優位に技量が加わり、Bのランスを難なく躱す。しかし、K=9のヌンチャクもBの手刀であっけなく払われた。K=9は作戦を変えて旋回とターンを駆使して優位な位置をキープ。まともに戦えばBの格闘能力に敵うはずもないので、そこから思いっきりシルバーブリッツをBのスケボーに打ち当てる。Bは溜まらずスケボーから放り出された。
「K=9殿。できるだがや。スケボー勝負ではあっしの負けのようだべ」
ランスを仕舞うと、攻撃方法を切り替えた。特殊ブーメランだ。危うく躱したまでは良かったが、
「うわぁぁぁー」
突然後ろから一撃。放り出される。第三の敵。これは、恐竜の様な怪獣だ。背中に特徴のあるトゲトゲの背鰭。自分の胴体二つ分もある太い尻尾の強烈な一撃に、K=9は跳ね飛ばされた。そこへ襲いかかろうとするBの至近距離に着弾するレーザーライフル。
「待て! 私が相手だ」
VSホッパーでBとの闘いを知り、駆けつけてきたクェイサードラグーン。アホ毛が一本ヘルメットの上にピンと立っているのはご愛敬。
「ほう。銀河刑事さんだすか。今のをわざと外すとは流石正義の味方さんだすな。相手にとって不足ないだす」
怪獣にK=9を任せ、Bはドラグーンにターゲットを移した。
「レクサス! ふーちゃんと遊べ」
ドラグーンはカプセル星獣に牽制を命じると、Bと戦いを開始する。レクサスとふーちゃんがせっせっせ。茶摘みの歌に合わせて手遊びに興じるのを背景に、二人の間に光条が交わされる。矢合わせ為らぬ光合わせと言うべき手為らしで、Bは射撃戦では不利と見て、スケボーに飛び乗り再び機動戦。
「レイザーブレイド!」
ドラグーンも武器を換えてバイクで応じる。
「やるだべ。あっしの名はキャプテンB」
「クェイサードラグーンだ」
双方、名乗りを上げるに相応しい敵手と見た。力量はほぼ互角。いや、僅かにBが勝っているように思える。しかし、Bとて迂闊に攻められない相手だ。攻撃を食らわせてもなかなか決定打にはならない。
「ヴァリアントファァァァーング!」
漸くK=9が怪獣を倒した。肩で息をしているくらいだから、相当に消耗している。
「ドラグーン殿。いい勝負だっただよ。あっしも二人を相手に勝てるとは思わないだす。勝負はまたの機会にするだよ」
実のところ。Bにはまだまだ有効な手段が残されていた。カプセル星獣も使わず終いだ。だが、目の前の相手はそんなもので勝っても面白くない好敵手。
Bはにっこりと笑みを浮かべると。
「さらばだす」
大胆にも背を向けて去って行く。
●鳥のぬいぐるみ
その頃。単独行動のEXブレイカーは、河原にある奇妙なマシンを発見した。近くに小学校高学年の背の高さ位の可愛い鳥のぬいぐるみが、命を吹き込まれたかのように動いていた。
「間違いない。ここだ」
ブレイカーは元から断てば事件解決。ふーちゃんを攻撃することなく人形に戻せるとふんで、マシン目掛けて突進。見事にエルフショットが怪しげなマシンを粉砕したが。
ぐしゃ。何かを踏んづけた感触。
「ぴぃー」
そして断末魔の悲鳴。
(「やば、何かまずったか?」)
「よくも俺の弟分を!」
知性ある九十九神はブーメランを繰り出し、意表を突かれたブレイカーはまともに食らう。
「わ。悪い。そんな積もりは無かったんだ」
熱血漢で悪に怒りを露わにするが、それ以外には優しすぎる男だ。大したことが無い攻撃とは言え、鳥のぬいぐるみにされるがまま。マウントポジションを取られもうタコ殴りにやられている。それでも、ズカズカズカと踏みつけられ、流石に利いてきたので思わず巴に投げ飛ばした。
鳥は空中で1回転すると背中からどすん。直ぐに起きあがれずばたばたとやっている。
そのあまりにも可愛い様に、ブレイカーは思わずぽ~っとなった。
「そ、その手は食わないぞ。可愛いさを振りまいて、騙そうって言うんだな!」
テレ隠し半分。
鳥はゆっくりと起きあがって、なんだかむきになって襲ってくる。たぶん可愛いと言う言葉がむかついたんだろう。倒すに倒せず、ブレイカーは逃げ出した。
●おかえりなさい
ジョーカー達は去った。しかし、ふーちゃんはまだ巨大化したまま。レクサスと手合わせ遊びを続けてる。どうしたものかと変身を解いたジーンと祐は手をこまねいていると。
「お待たせ」
静流が後ろにひーちゃんを載せてやって来た。変身を解いたブレイカー・中島俊介に付き添われて緋色も到着。
静流はひーちゃんのヘルメットに端子を繋ぎ、SMG形状の筒先をふーちゃんに向けた。
「さ、ひかるちゃん」
促す静流。
「……でも」
もじもじするひーちゃんに祐は言った。
「大丈夫。ひーちゃんとふーちゃんの胸には、楽しい思い出が残ってるんだ。呼んでご覧、戻っておいでと」
「うん」
手を組み、祈るようにひーちゃんは呼びかけた。
「フロシアンテ! ひかるの所に戻ってきて」
照射される褐色の光。ふーちゃんは遊びを止め、ぽんとジャンプした。そして縮みながらひーちゃんの腕の中に。
「所で、静流さん。他の九十九神はどうする?」
俊介の質問に
「問題は九十九神マシンが壊れたのに、動いていると言うことですね」
どれくらい動き続けるのかは判らない。これからの事を考えると、頭が痛い静流であった。
同じ頃。ハム博士の研究所。
「……そうですか。あまり長い時間は保たなかったのですか。改良の余地がありますね」
リリィの報告を聞きながらハムはマシン改良に取りかかる。元に戻ったコレクションを手に、リリィの目は在りし日の思い出を見つめていた。