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ご近所防衛隊12 君にタッチダウン

 知立のヒロさんラーメン。混雑する店のカウンターで味噌ラーメンをすすりながら、知立小の戸島まさこ教諭はふうっと溜息。

「今年も市販ドリルか……」

 年度末に業者にドリルやテストの注文がされている状態だ。問題は教材自体の質の良否ではない。2002年度時点における静岡の出版文化会のように、教材強要と言って過言でない状態が問題なのだ。

「もっと子供達の実状に適った物を使おうとしてもなかなか難しいのよね」

 ついぼやく。

「おや? 先生ですか?」

 声を掛けたのは隣の席の男。愚痴を聞いて貰っているうちに、同門筋であることが判明。

「おかげさまですっきりしました。先生はどちらの学校ですか?」

 戸島先生が尋ねると。

「いろいろありまして、今は知立で小さな塾をやっています」

 名刺を渡す。数楽塾と書かれていた。


 数楽塾。ハムは職員を召集しパンフレットを渡した。以前作成した物をリニューアルしたものである。月謝は他と比べて安い。

「新学期です。我々の求める子供達をゲットするために頑張りましょう。幸い、影響力を持つ地元業者の教材は、必ずしも子供達の実状に適ってはいません。だからあまり成績の良くない子供達の中に、真の逸材が眠っているはずです」

 趣旨を説明するハム。パソコンのモニターに映るノアは、

「知立小と言えば、この前転校してきた女の子達のせいで険悪ムードね」

 ノアは簡単に内容を纏めた。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 三月始めに知立小に転校してきた二人の女の子。新学期から5年になる二人は対照的。

 白いワンピースが映えるお嬢様が穂村さん。

 黒のゴスロリ風がよく似合うお姉さまが楼津さん。

 誰が付けたか二人こそ。知立小の白バラと黒バラ。

 早く攻めなきゃ取られてしまう。

 二人のハートは狙われて、仲良くなるため男の子達が争っている。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「これ。利用できそうですね」

 ハムはにやりと笑みを漏らした。

「内部の実状を知っている人の情報協力も必要かも」

 ノアはぼそりと追加した。


 程なく土管下の秘密基地は、司令の人脈関係でジョーカーの動きを知る。

「何が無くても、男の子達の争いをなんとかしなくちゃね」

 幼い司令は仲間に協力を要請した。


●白と黒そして緋色

 リンリンリリリンリリリリリンリン。

「え! こんな時間っ!」

 藤堂緋色は慌てて布団を蹴り上げた。

 食パンとミルクを電子レンジに放り込み、慌てて身支度を済ます。幸い、真っ暗でも身支度できるよう畳んで順番に積んである。勿論、何時どんなときにでも活動するための、WCとしての心得だ。

 チーン。

 小皿に載せた食パンは、下半分が湿気ているもののほっかほか。マグカップのミルクも暖かい。

 レタスとチーズとハムを挟み、芥子マヨネーズをくるん。

 ハムスターのように忙しく口を動かし

「ごちそうさまー」

 シャカシャカと歯磨きをして

「いってきまーす」

 まで僅か5分。ランドセルを引っかけると、朝の陽眩しいいつもの道をタッカタッカと駆けて行く。


「はぁはぁはぁ……。えー。まだ5分前なのにぃ~」

 校門は閉まっていた。

「くすくすっ」

「穂村さん? それに楼津さん?」

「藤堂さんも先生に呼ばれたんですが?」

 転校初日と同じく、黒のゴスロリ服の楼津霧華と白いワンピースの穂村葉月が立っていた。何故か、鞄もランドセルも持っていない。

「あらあら。みんな随分早いのね」

 後ろから来るのは戸島先生。

「藤堂さん。あなたも呼んでたかしら。みなさん春休みなのにごめんなさいね」

 先生の声に

「あ……」

 お昼からグランドは児童に解放して居るけれども、ほんとは新学期までお休みでした。


「戸島先生。会議はお昼からです」

「はい。それまでには……。1組に居ますので、何かあったら宜しくお願いします」

 戸島先生は三人を伴い教室へ。

「ごめんなさいね。慌ただしくて」

「いえ。でもどうしたんですか?」

 葉月がきっかけを作ると

「あなた達に何の責任もないのだけれど……」

 戸島先生が切り出した。


 クラスの男の子達が霧華と葉月にお熱を上げてしまい、収拾が着かなくなっているのだと言う。

「そうだったんですか?」

 二人は顔を見合わせた。

「そう言えば……」

 やたらと校内を案内したがる男の子が多かったような気がする。


「やったー。新学期は持ち上がり!」

 戸島先生が内々に話す情報に、緋色は大喜び。

「あ、だから3月初めの転入が通ったんですね」

 葉月の言葉に。

「4月からも頑張りましょう」

 緋色は葉月と霧華の手を握った。


●ベストメンバー

 ご存じ数楽塾。防音の効いた講師の準備室に、ジョーカーの面々が集まる。

「見事に、ベストメンバーですね」

 ハム博士はメンバーを見渡して言った。

 蘭先生は居ないものの、講師の烏鳩。今年の卒業生、南風極楽丸に、同い年設定の斎門武道。歳から言えば新6年生にあたる宇佐美・冬慈と織部・真白。そして、そもそも今回の震源地。緋色のクラスメイトになる葉月と霧華の二人。

 紛う事無く、知立小に橋頭堡を創るにはうってつけの面々だ。

「それにしても白バラ黒バラって、まったくもう」

 烏鳩はちょっと憤慨。

「思春期も下がって来ているみたいですね。私はついぞモテたことが無かったのですが……」

 霧華が当惑したように言う。

「いや、そうじゃなくって。知立小には世界一の美少女ヒロ閣下がいるというのに何で争うのかしら、不思議ですわ」

 ムキになる烏鳩に真白の失笑。まあまあと窘める武道。

「しかた無いですよ。あたしたちは普通にしてても、数段大人なんですよ」

 葉月の言うとおり、クラスの誰よりも人と上手くつきあう術を心得ており、他の女の子達よりもおしゃれが上手だ。コーディネートセンスを親に髪を結んで貰っているお子様と比べて貰っても困る。

「そうね。正真正銘現役のヒロと比べちゃいけないわよね」

 烏鳩は気を取り直す。

「こん!」

 その時、パソコンのモニターにノアの姿が映し出された。

「こんにちはノアちゃん。お願いしたの出来てる?」

「オリヴィエちゃん。名前は『ブランカ・フヴォースト』ロシア系ハーフで、成人まで日本とロシアの二重国籍よね? 出生証明書と戸籍は創っておいたわよ。住民票は今日付けね」

「ノアちゃんさんきゅー」

 真白はにっこり。

「ついでに冬慈ちゃんのもね。ダヴの親戚にしておいたわ。良い機会だから復学しちゃわない?」

「学校かぁ……どれくらいぶりだろ。基地では某フェレットおにーさんに勉強見てもらったりしてるけど、学校生活も大事だとか言われちゃったし」


 ピンポーン。

「おや? 誰か来てるだよ」

 武道が防犯カメラの画面を覗く。高学年位の女の子だ。

 ハイビスカス模様のワンピースも可愛らしいポニーテールの女の子。

「おや、迷わず来れましたか。あの子はユーリ・S・ファラディーアさん。我々の新しい同志です」

 そう言うと、ハムはドアまで迎えに行った。


●ギューゴの傾向

 秘密基地。

「なぁノア。知立小校区内で参加できるスポーツ少年団とかあるか?」

 極楽丸がパネルに向かって問う。

「んーと。有ることはあるけど。問題はぴーちゃんが影響力を行使出来なきゃだめって事でしょ?」

「まぁな」

「中学生って、小学生よりも高校生よりも時間的制約が大きいのよね。門限は小学生と大差ないし、授業時間は長くなるし、宿題は学科毎に出るし、塾もあるし、部活に入ると更にね」

「部活とかやるとどうなるんだ?」

「ざっと、自由時間1時間強ってとこかな。1年生だと雑用もあるしね。スポーツ系は大変だけど、文化系も結構大変よ。いっそ、ハムちゃんとかダヴちゃん辺りに頼んで創ってみたら?」

「そうだな。既存のスポーツ少年団は小学生までで、暴行女も中学入るとバトミントンとか言ってたし……」

 五月蠅い先輩が居ないと言うのは食指が動いた。

「創ろう。ギューゴの傾向だぜ」

「それを言うなら鶏口牛後」

 ぼそりとノアは呟いた。


●魚信

 夕焼けの頃。数楽塾を葉月や霧華と出たブランカは分かれ道で手を振り別れる。

 100mばかり歩いたであろうか?

「誰?」

 言って尾行する男の子を認めた。

「お前こそ誰だ。穂村さんと親しげに……」

「親しげって……ひょっとして妬いてる?」

 ブランカは釣れたとほくそ笑む。

「何なんだよお前」

「人の名前を尋ねるときは、自分から名乗るって教わら無かったのかな?」

 何も言わず男の子は突っかかってきたが、彼も伊達に修羅場は潜ってない。普通の小学生如き簡単に往なせる。派手なアクションの相手を僅かの動きで制し、思いっきり塀に激突させた。

「危ないなぁ。何を勘違いしてるのか知らないけど。あの子達とは同じ塾なだけだよ。学年も違うしね」

 笑いをこらえて澄まして言う。

「ははぁ。そうか、同じクラスにとても親切な男の子が居るって言ってたのは、ひょっとしたら~」

 既にブランカの術中。男の子が『塾に通って勉強すれば親しくなれるかも』と確信するのに3分とは掛からなかったのである。


●ジャスティス基地

「サン♪ サン♪ サン♪ さわやかSANチェックー♪」

 土管の中でキーワードを唱える。

 緋色が地下の秘密基地に転送すると、二人の仲間が待っていた。

 漆原祐とジャグルス・ディセンバーだ。

「春休みだって言うのに大変だな。それで、問題の二人って言うのはヒロのクラスか?」

 ジャグルスの問いに

「うん。ジャグルスも会って見れば解るけど、どっちもヒロ達なんかよりもずっと大人の雰囲気で、男の子達が放っておかないの。あ、それでねタスク……」

 すっと傍による緋色。祐は内緒話のように声を潜める緋色に身を乗り出した。

「……。だからタスクの話、参考にしたいな」

 にっこりと緋色の言葉に祐の頬に注す紅。

「お、女の子のハートをゲットした先輩って……」

 嘘では無いから困ったものだ。

「うん。だから誰もタスクの事、怪しまなかったでしょ?」

 二人女の子の趣味やら好みやらを聞き込みした時、少しも変に思われなかった。

「確かに……却って、好意的だったくらいだ」

 知立小の校区内における祐の存在は、緋色の面倒見の良い兄貴として定着している。

「祐。その話が途中だったな。ヒロのために最初からするか?」

 ジャグルスが促すと、祐は箇条書きに情報を提示した。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

1.穂村さんと楼津さんの間に競争意識はない。

2.穂村さんはどちらかと言えばおしとやかな風に見える。

 服のセンスも清楚でお嬢様っぽい。穏やかで悪意を持てない話し方をする。

 お料理とかが好きな子のようだ。

3.楼津さんはちょっぴりニヒルな性格で、気が強く闊達な言動が多い。

 鉄棒とかが上手く、ドッジポールの時の指示が的確。

 女の子から格好いい人と思われている。

4.二人の好み

 ・穂村さん

  夢に向かって努力して頑張る人。

  乱暴をしたり人を出し抜いたりするズルイ人は嫌い。

 ・楼津さん

  努力する人に好感を持っているようだ。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「あ、あとさ。これは言っても良いのかな?」

「え? なぁに」

「正確にはヒロインは三人。でも彼女には彼氏が居るらしいんで皆諦めてた」

「へー。そんな子居たっけ?」

「それが傑作でさぁ」

 笑いながら自分を指さす祐にきょとんとした顔の緋色。

「なるほど、無自覚か」

 ジャグルスが肩をすくめた。


●志願者

 体験申し込み書の山。

「やけに5年生が多いですわね。これも、わたくしのヒロがお目当てかしら」

 烏鳩は予想外の嬉しい悲鳴。

 そんな状況下、明日の準備をするハムの元に3人のお客さま。

「戸島先生に藤堂さん。それに漆原さん」

 会釈するハムに

「先生。ヒロに聞いたんだけど、クラスの男の子が大変みたいなんだ。それで、何か手伝え無いかってね」

 緋色に手を引っ張られた祐が申し出た。

「なんかスポーツとかサークル活動とか、良い形で闘争心を昇華出来るといいんですが」

 戸島先生は、同門のハムに相談する。

「ええ。私で良かったらご協力いたします。ところで、戸島先生。丁度良かった」

「はい?」

「懇意にしている貿易商さんが、長期滞在のためご子息の日本での教育を考えて居られるのですよ。さしあたって学校を探しているのですが、日本とロシアでは色々と習慣も違います。相談に乗っては頂けませんか?」

「日本語はどうですか?」

 戸島先生が尋ねると、ハムは内線を使って

「ブランカさん」

 男の子を呼んだ。

「ブランカ・フヴォースト。もうすぐ12歳に成ります」

 流暢な日本語であった。


●新学期

「悲劇に向かって挑む者を、運命の神は憎むようですね」

 些か皮肉めいて霧華がぼそり。

「それだけ戸島先生が良い先生だって見込まれているってことですわ」

 葉月が言葉改めをする。

 元々新採の先生だった戸島学級は、学校の配慮で他のクラスと比べて人数が少なかった。そして、年度末の転出が3名。そのせいもあって転校生ラッシュである。しかも、そのうち国際色豊かな子が二人もいるのだ。

「ジャン・ノエルだ、これから1年宜しくな?」

「名前、ユーリ・桜・ファラディーア。一族代表して留学きた。一族を豊かにするため、頑張って勉強する! なのでよろしくお願いする」

 日本語ぺらぺらのフランス系の男の子と、日常会話がやっとのオーストラリアの女の子。だから、

「宇佐美冬慈です」

 純然たる日本人である彼の存在はさほど目立たない。持ち上がりのクラスで無ければ、転校生と言うことも意識されなかったであろう。

 斯くして戸島学級38名の1年が始まったのであった。


 始業式が終わり、オリエンテーションが済んだ5年1組の教室。緋色達女の子がおしゃべりをしていると。

 誰? モスグリーンの服を着た目を魅く男の子が一人。スポーツマンタイプで結構イケメンの子だ。

「ヒロ。お客さまだよ。卒業生の斎門先輩」

 机の前に来た格好いい男の子は

「ブログ見ただよ。オカルト情報を集めてるでがしょ?」

「え? うん。集めてたけど……(うぅ。まだ収まってないよ~)」

 クレクレバードや走るチーター男。私を食べてと裸の身体にリボンだけまとって現れるチョコレートの妖精ラッピング娘。恐怖の奇病猫耳病に、言葉使いがおかしくなるクッキーの話。

 レポート用紙に丹念に纏められた情報はちょっと圧倒。

(「な、なんかなのぉ!」)

 慌てて緋色はレポートを閉じた。このイラスト調処理された目伏せされてるラッピング娘の写真。背景に覚えがある。

 そこへ、

「誰か来てぇ~。清田君と久野君がぁ~」

 助けを求める女の子の悲鳴。見ると男子二人がもみ合っている。

「ケンカ、良くない。努力する姿、きっと彼女達見てる。気持ち必ず伝わる。だから黙って頑張る」

 近づいたユーリが突き飛ばされた。双方必死で回りが見えていない。互いに相手の袖を掴み物凄い形相。

 やって来た武道は凛と叫んだ。

「女の子達。二人の名前を何度も呼ぶだす」

「清田君! 清田君! 清田久きよた・ひさし君!」

「久野君! 久野君! 久野光昭ひさの・みつあき君!」

 隙を見て繰り出されるパンチを誰にも当たらぬよう弾く武道。名前を連呼する女の子達の声。


 不思議なもので、名前を呼ばれている内に、二人の頭に昇った血も冷めて来た。

「怪我は……鼻血くらいだすか。理由はなんだすか? 男が殴り合いをするんだす。詰まらないことでないでがしょ?」

「乱暴されたユーリに謝りなさいよ」

 助けを呼んだ女の子の詰問に、ばつの悪そうな二人。

「あのう。あたし見てました。ケンカの原因は清田君が楼津さんのほうが綺麗だと言い、久野君が穂村のほうが可愛いって言い合いになったんです」

 ケンカの原因に顔を見合わせる霧華と葉月。

「久野君。嬉しいけれど。あたしは乱暴する子は嫌いです。だから、久野君を嫌いにさせないで下さい」

「私も穂村さんと同じです。清田くん、私の為を思ってくれるなら仲直りして」

 二人にこう言われては是非もない。しかし、そう簡単にしこりが無くなるわけもない。

「この際だから、きっちりと勝負付けさせて上げたら?」

 冬慈が手段としてドッチボールを提唱。それは良い考えだと男の子達が賛同した。この際である、女の子にいいとこ見せたい。

「なら審判引き受けた」

 丁度、武道を迎えに来た極楽丸がいつもの調子で立候補。

「審判は彼女居る人にお願いします」

 調停者が優位に立つのはどこの世界でも同じ。ライバルを見る眼差しを向ける男の子達にさしもの極楽丸もたじたじ。

「じゃあ、俺でいいか? ちゃんとその、相手だっているし」

 祐が登場。

 春風の清しい校庭に、転校生の歓迎を兼ねた男子のドッチボールの試合が始まった。


●雨降って

 流石に転入生には遠慮するが、ここぞとばかりにドッチボールもケンカ腰。

「あう!」

 開始3分で早くも冬慈が脱落。段々試合は白熱してくる。


 やがて残りが絞られ、二派だけになった時。

「これ。怪我人でないか?」

 武道の目にも殺気立って映る。

「顔面ノーカウントルールにしてるからな」

 極楽丸は真顔で応えた。顔面ヒットが有効ならば故意に狙いかねない勢いだ。

「あ……」

 内野同士の至近距離から放たれた久野君の強いボールを、胸受けでキャッチした清田君がバタリと倒れた。

「……ヤバイ。心臓が止まっている」

 祐は常無い焦りを覚える。

「いけない! 心臓マッサージを!」

 緋色は習い覚えた手順を繰り返す。しかし蘇生しない。

「キヨタ! おまえ死なない。悪い精霊、近くいない!」

 ユーリは両手を組んで強く胸に打ち付けた。すると、文字通りふうっと息を吹き返す。

「う、動いたぁ!」

 半泣きの緋色。心臓は再び死と戦い続ける大砲を撃ち鳴らし始めた。


 ともあれ。一つ間違えば大変なことになったこの大事件のお陰で、男の子達の対立は急速に収まって行ったのであった。余談であるが、霧華や葉月の通う数楽塾に入りたいと言う男の子が増えたのは想像に難くない所である。


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