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透明な薄闇
透明な薄闇
強い日差しが、赤い地面に黒い人影を焼き付けていた。
その影が自分のものだということに、一瞬遅れて気が付く。
目を上げると、何処までも続く褐色の地平線。熱い風が、汗と砂埃にまみれた頬に容赦なく吹きつけ、過ぎてはまた吹き荒ぶ。
今、自分は何処にいるのだろう。
もう何日も歩き続けているはずなのに、そんな疑問が頭を擡げた。
この世界に、自分以外に生きているものはいるのだろうか。歩いても歩いても何もない、この世界に何かがいるんだろうか。
考えてみたら、荒野を歩いている自分に気付いてから、空腹を覚えたことがないように感じる。
水は、飲んだだろうか。
もしかしたら、これは夢なのかもしれない。
だが、そうだとしたら一体誰の――?
そんな、ぼんやりとした意識を細い糸で繋ぎ止めている。
この世界は、自分は、本当にここに存るのか?
ひとつでもいい――証を探している。