3章Bパート
それからどのくらい探し回ったかなんて覚えていない。
学校・友達の家・コンビニやスーパー。
夏美の行きそうなところは殆ど探しつくした。
あと一つ、一つだけ心当たりがあった。
「頼む・・・居てくれ・・・」 最後の望みを託すように、俺は呟き踵を返して走り出す。
―――それは、昔二人で来たことがある“花形卦公園”。
大きな公園で、その敷地面積は某大規模野球ドームがすっぽり入りそうな程。
公園 というにはあまりにも大きすぎるため、地元の人には“森みたいな公園”。
通称『モリコー』と呼ばれている。
その、大きな公園に小さい頃一回だけ行ったことがあった。
小さい頃の記憶だし、なんで言ったかそこで何をしてたのかは覚えていない。
でも、もうそこしか宛てはなかった。
・・・・・・。
・・・。
「はぁはぁ・・・」 肩で息をしながら公園へと足を踏み入れた。
入ってすぐの所に水飲み場があった。
キュっと蛇口を捻って水を少しだけ出して飲む。
走ってきた為、なのか口や喉がカラカラに渇いていた。
飲んでも飲んでも、口の渇きはとれなかった。
蛇口を閉じて、俺は辺りを見渡した。
とりあえず探してみるしかない!!
俺はゆっくりと歩を進めていった。
地面には歩道用に白いコンクリートのタイルが敷き詰められていて
その道沿いにブランコやシーソー等の子供たちが遊ぶ遊具があった。
広い公園なので、全部の遊具の数なんて把握していない。 ましてや数年ぶりに来たから尚更だ。
夏場だというのに、公園の中はやたらとヒンヤリとしていた。
一瞬今は夏ではなく冬なのか? と錯覚した。
でも、周りの木々や草っ原から聞こえてくる虫の声が俺を錯覚から引き戻す。
暗く、とても静かな夜の公園。
ぽつりぽつりと立って、辺りを白い光で照らしている外灯も少し寂しげだ。
―――こんなところに、夏美は居るのだろうか?―――
暗く、冷たい公園の夜道を歩いていると
ふと、そんな疑問が思い浮かんだ。
―――俺は、何か勘違いをしてるんじゃないのか?
探しているのは夏美が心配だからではなく
今の生活が“変わってしまう”のが怖いからではないのか?―――
「違う!! そんなんじゃない!!」
その疑問を掻き消すように、俺は頭をブンブンと横に振って走り出した。
「夏美ぃー!! 居るのか?! 居るなら返事をしてくれー!!」
走りながら、四方八方に夏美の名前を呼び続けた。
もう必死だったんだ。 とにかく見つけて、安心したかったんだ。
―――数分、俺はそうやって走り続けた。 でも夏美はとうとう見つからなかった。
「夏美…っ くそっ!!」 自分の無能さに異様に腹が立ち、足元に転がっていた
石ころを勢い良く蹴飛ばした。 石ころはカラカラと鈍い音を立て
一つのベンチの方に転がっていった。
その転がっていた方を見ると、ベンチにちょこんと誰かが座っていた。
外灯の明かりに照らされて、顔が辛うじて把握できた。
「夏美!!」 そう、そこに居たのは夏美だった。 やっと、やっと見つけた。
俺は夏美に駆け寄った。




