2章Bパート
【8月6日】
翌日、俺は智瀬とデートしていた。
デート と言ってもこの前みたく外には出掛けていない。
今日は智瀬の部屋でのんびりする日なのだ。 所謂、お家デート。
俺たちの住んでいるこの凪名町は、田舎だ。
海とか田んぼとか以外は、本当に少しのスーパーやコンビニ。
娯楽といえばパチンコ屋しかない。
俺たち若者が行くような所はハッキリ言って皆無に近い。
だから、俺と智瀬は金がない時とか天気が悪い日。 もちろん何もない日でも
大体はこの智瀬の部屋で過ごす。 智瀬の部屋は二階で日当たりも良く風も良く通る。
なので、カーテンを閉めて窓を開けると真夏でも結構クーラー要らずだったりする。
理由はもう一つあって、智瀬の両親は仕事が忙しいらしい。
デザイナーをやっているらしく、海外を忙しく飛び回っているとか。
両親も兄弟も居ない智瀬の家は、全く気負いせず居れる空間。
それに、智瀬も居るのだ。 俺にとってはパラダイスなのだ。
「はぁ~…なんか眠くなってきたなぁ」 俺は智瀬のベッドに横たわると欠伸を一つ。
「さと君、私の部屋に来ると必ずそれだよね?」
智瀬は俺の横に腰掛けた。
「ん? そうだったか?」
「うん、そうだよ? ひょっとして何かを期待してるの?」
悪戯に、智瀬は笑った。
「ばっ…そんなんじゃ…ねーよ」 思わず言葉に詰まる。
期待してない と言えば嘘になる。 俺だって健全な男子なのだから。
…そう言えば、俺たち付き合って2年以上経つのにその“何か”は愚かキスすらしていない。
手を握ったり、抱きしめあったり。 智瀬のか細い肩を抱いたり。
恋人らしいことと言えば、それだけだった。
今時珍しい程の、純粋な関係だった。
したくないわけではない。 むしろ、したい。
でも、“それ”をしてしまうと何かが壊れてしまう。 そんな気がして進めないんだ。
きっと、智瀬も同じなんだと思う。 今までの関係…では居られなくなる気がするから。
「・・・」 俺は黙って智瀬の膝に頭を乗せた。
智瀬はクスクスと微笑みつつも、俺の頭を撫でてくれる。
その感触が、智瀬から溢れてくる甘酸っぱい香りが。 温かさが好きだった。
だから、これでいい。 このままでいいんだ。
無理に変わる必要なんてない。
もう暫くは、このままで居たいから。
―――俺は、柔らかな智瀬の中で静かに眠りへと落ちていった。