8章Cパート【Ⅲ】
「暑い・・・」 呟きながらジャリジャリと砂を踏みながら歩く。
今日は昨日に比べ暑かった。
それは商店街の奥。
今は使われていないところ。
母さんから聞いたことがある。 昔とある事件があって
その事件で死亡者が出たそうだ。
警察は犯人を取り逃がし、今も捕まっていないとのことだった。
所謂、イワク付物件のようなものだった。
その事件で殺された男の魂が夜な夜な徘徊するとかの噂が立って。
いつの間にか、“その奥のほう”だけには人が寄り付かなくなり
そこに軒を連ねてた店の人も『商売にならない』と判断し
重く、店のシャッターを閉めてしまった。
それから数年、ここはすっかり閑散としたシャッター街となってしまったわけだ。
「あちぃ・・・」
天井のアーケードはそのままなので、日差しは射してこない。
そんな本当に“人類が滅亡した後”の商店街のようだ。
暗く、でも外の風通しが悪いため空気が篭り逆に暑い。
なんでこんな所に、昨日の少女・・・智瀬ちゃんは平気で居られるんだろうか。
いや、或いはここに居なきゃいけない理由でもあるのか・・・。
ジャリ・・・。
シャッター街の一番奥の店。 昨日と同じシャッターに少女は寄りかかっていた。
手には何故かアイスの棒を持っていて、それをペロペロとなめている。
「智瀬ちゃん、まさかそれ盗んできたの?」
全く、変な挨拶だと思う。 来て早々“盗んできた”とか。
「違うよぉ、これはちゃんと買ってきたの!」
女の子はそう言ってワンピースの胸元からレシートを出してみせた。
チラリ、成長過程で少し膨らみ始めている胸元が露になる。
「わっ・・・どこから出してんだよ?!」
「どこって・・・あ・・・」
取り出した事で、自分の胸元が少し開けていた事に少女は気づいて
とっさに両手で隠す。
「聡くん・・・えっち」 女の子は恥ずかしそうに俯いた。
「ちょ・・・なんでそうなるんだよ」
「いくら友達でも・・・そういうのって視姦っていうんだよ?」
「しかんって・・・」
その言葉、どこで覚えたんだ・・・お嬢さん・・・。
・・・・・・。
・・・。
「んで、いつも君はここで何してるの?」
散々俺を変体呼ばわりした智瀬は
飽きたのか再び少し溶けかかったアイスを舐め始めた。
「何もしてないよ」
舐めながら、女の子は答えた。 視線は完璧アイスにいっている。
「学校は?」
「行ってるよ。 でも今夏休み中だから、家に居たくないしここに来てるの」
「家が嫌いなのか? でも、父さんと母さんのことは好きなんだろ?」
「・・・・・・」
その言葉で、何故か少女の動きが止まった。