第一話 妖怪の王・妖霊王
世の中には、科学的に説明できない現象というものがたくさん存在する。
例を挙げるならば、金縛りやポルターガイストといったものだ。
そういったことは、一般的にはストレスからくる思い込みだとか言われているが、実際は違う。
あれらは、霊、主に悪霊が起こしている現象なのだ。
つまりこの世界には、霊といった非現実的なものが存在している。
そして、俺こと御影 凌牙は九代目妖霊王、妖怪の王である。
これは、妖霊王である俺と悪霊共との戦いの物語である。
———2030年7月14日日曜日———
自分が妖霊王であると分かったのは、十二歳の誕生日を迎えた朝だった。
朝起きるとすごく体が重い、というより抱きつかれてる?
「なんだ……?」
背中には2つの柔らかい感覚がある。
「んん……」
「っ……!!」
後ろを見ると、なぜか俺の布団の中で俺に抱きついて女の人が寝ていた。
「……ん。ああ、起きたか。凌牙。──十二年間、そなたをずっと待っていたぞ。ようやく、妾を視る力が発現したようだな。」
「は?え?ちょ、え?なに?え?だれ?え?」
その、人かもわからない“何か”には獣の耳と尻尾が生えていて、なぜか俺の名前を知っていた。
──十二年間?どういうこと?まずこの人は誰?というか人なのか?なんで俺の名前を知ってるんだ?
いろいろな疑問が頭の中に出てきた。
わけがわからない。
自分が何者かすらもわからなくなってきた。
それほどに頭が混乱している。
5分くらい経った頃、ようやく落ち着いてきた。
落ち着いたとはいっても、頭にはたくさんの疑問が残っている。
「えっと、まずは、誰ですか?というか、なんで俺の名前を知ってるんですか?」
「……そうだな。まずは名を名乗らねばな。」
すると彼女は起き上がり、尻尾をふわりとさせ、布団の上に座った。
「妾は、妖霊王に仕えてきた妖霊四皇の1人、九尾の狐、凛狐だ。凌牙、よろしくな。」
凛狐はそういって微笑んだ。
「九尾の狐?」
「ああ。九尾の狐とは、その名の通り九つの尻尾が生えた狐の妖怪のことだ。」
「妖怪!?」
そう言うと、凛狐は狐の姿へと変わる。
「っ……!すごい!狐になった!」
「これが本来の姿だ。九尾の狐には変化、つまりは変身の能力がある。」
「そうなんだ!すごいね。……そういえば、妖霊王?ってなんですか?」
そこからは凛狐から、妖霊王についてやその能力について、いろいろと説明された。
彼女曰く、妖霊王とは、その名の通り妖怪の王らしい。
王とはいっても、ノルマは基本的に何もないそうだ。
しかし、ただ王という称号をもっているだけのポンコツというわけではない。
俺は妖怪を視たり、会話したりすることができる。
実際に今、凛狐と会話できている。
そして、俺との絆が深い妖怪であれば、その妖怪を身に宿して力の一端を使うことができたりするみたいだ。
いろいろ聞いた後、ある疑問が浮かんできた。
「えっと……妖霊王って、今はどこにいるんですか?」
凛狐の耳がピクリと動いた。今まで淡々と説明していた彼女の表情が、わずかに険しくなる。
「──行方不明だ。」
「え?」
「十二年前、つまり凌牙が生まれた頃から、妖霊王は消息を絶ったということだ。」
「妖霊王がいなくなったのに、俺のところにいてもいいんですか?」
「そこが重要だ。妖霊王が消息を絶ってから妖霊四皇
で会議をした結果、妾が新しい王を見つけてくるということになったのだ。」
「ということは……?」
「そうだ、凌牙。そなたが妖霊王となるのだ。」
俺は完全に思考が停止した。
凛狐は落ち着いた声で話を続ける。
「お前が十二歳になり“視る力”が発現したのも、妖霊王の素質ゆえだ。妖霊王は特別な妖力を持ち、幼少のうちは周囲に漏れやすい。妾がそなたの傍で守っていたのも、そのためだ。」
どうしよう。俺絶対に王とか無理だわ。でも小さい時からずっと守ってきてくれたんだしな……
「安心せよ。すぐに“王になれ”とは言わん。」
「よかったー。」
「だが──そなたの力を狙う者はいる。」
その瞬間、部屋の空気が変わった。
まるで悪い“何か”がこちらをのぞいているような、そんな冷たい感覚。
窓の外を見ると、その“何か”がこちらへ一直線に走ってくる。
凛狐の表情が一気に鋭くなった。
尻尾が逆立ち、耳がピンと立つ。
「安心せよ、凌牙。妾がいる限り、そなたには指一本も触れさせん。」
凛狐は凌牙の前にすっと立ち、九本の尻尾を大きく広げた。
「凛狐……どうするの?」
「決まっているであろう。凌牙、初陣だ!」
続く…




