☆2 牢獄に近づく男①
第一話の直接的な次話ではないので、今回は一人称で書かせてもらいます。
これも書き出しです。主人公の回。
(作品はハイファンタジーです。)
アメウス街区の地下牢獄に広がる冷たくて硬い石床の上に軽い足音が響く。
肩掛けの小さな鞄をさげた男の子が厳つい男衆の唸り声のする中を歩いている。
古い地下の下水道だ。
歳月をかけて牢獄とするために作り替えられており、かなり深くて広い。
ここに陽光は届かず、壁掛けのランプと手持ちランプの灯りだけが頼りだった。
歩を進めるたびに足元の石床から這い出すように砂煙が立つ。
埃に油臭さが混じっていて、吸い込むとどうにも鼻腔が渇きがちになる。
地下という密閉された特異な空間。
換気の悪さか慣れていない場かで、吐き気を覚えた彼は口元にハンドタオルを取り出した。
片手は手持ちランプですでに塞がっていたが、これで両手塞がりだ。
独房の前を通り過ぎると酸っぱくてツンとした汗臭い匂いが鼻を衝いた。
流れていく景色を横目にするとどうしても鉄扉の窓へ目が行く。
そっと歩み寄り、つま先にちからを入れると踵を上げ、うんと背伸びをする。
その先に蓋をおろした便器が垣間見えた。
囚人たちの生活臭までが目に沁みてくる思いで、目を細める。
「……うっぷ。気持ちわりぃ」
囚人に声を掛けるでもなく先を急ぐようにその場を離れた。
古い水路はそのまま使用されていた。
濁った水流がジャブジャブと音を吐いて遠くからまるで耳の穴を目掛けてくるようだ。
静寂をかき消すように癒しが得られるが心地良いとまではいかない。
足音が響くと、ドブネズミが鳴りを潜めるように壁の穴へと滑り込む。
ここは社会の裏切り者が落ちぶれて収容されるにはおあつらえ向きの場所だ。
清潔感があるとも言い難く、清掃の手が行き届いているとはとても言えない。
節約を意識するように灯りは最低限しかともされておらず仄暗い。
初見の物珍しさといった顔でキョロキョロと左右を見渡し歩きながら、過ぎ行く牢に眼をやる彼は牢番のセピア(12)。
歩くたびに彼の腰元でチャリチャリと揺れる鉛棒の擦れる音。
揺れるたびに耳をかすめる鍵束の音が囚人たちの気を惹きつけていく。
一人称で進めると言葉がたくさん浮かびます。でも長くなるぶん、煩わしいかもしれません。
丁寧に仕上げたい、の気持ちが出るとセリフが少なくなります。
引きは弱いけど第1話と第2話なら書き方としてどちらが有効でしょうか?




